映画おじいさん

たそがれの東京タワーの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

たそがれの東京タワー(1959年製作の映画)
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若尾文子そっくりさん主人公(仁木多鶴子)が鏡の中の自分と会話したり、川地民夫に似た相手役(小林勝彦)には父親が船乗りだとかフランス留学とかスラスラと嘘つきまくり。多重人格で虚言癖。なんてこと言ったらこのころのメロドラマはみんなそんなものか。

主人公は銀座のブティックの住み込みお針子さんで、同僚がデートの話をしているだけで、自分だけが孤独だというような被害妄想に震える。
恐らく唯一の身内である養老院のおばあちゃんには「東京は何でもあるけど、私の手に届くものは何もありません」と手紙を書く。可哀想を通り越して怖い。ちょっとやり過ぎな演出に好みが分かれそう。私は好き。

そんなエクストリームな主人公が、素敵なカエルだと思っていたら実は王子様だったという童話みたいな、超ベタな恋愛をする。何も変化球はないけど、このタイトルにはこういうものを観客は求めているはず。そして最後はみんな良い人。可愛らしい小品でした。