影山影司

らせんの影山影司のレビュー・感想・評価

らせん(1998年製作の映画)
3.0
リングとらせんは2001年宇宙の旅と2010年宇宙の旅のような関係だと思っている。どちらも小説の映画化だが、映画同士に繋がりはなく独自に小説を映画化している。

原作もホラーからSFへと切り替わっているので評価は難しい。そしてキャストこそ同じだが監督が変わった結果、映画版リングとはまったく異なる作品になってしまった。

映画版リングの高山竜司はちょっとした超能力者だが、今作の高山竜司はかなりの霊能力者として描写される。呪いのビデオや貞子よりも、高山竜司の超能力を中心に話が進むほどだ。作中でも「未来が見えるならどうして死んでしまったんだ?」と突っ込まれているが、映画版リングじゃそんな達観してなかっただろ、と言いたい。貞子の呪いで死んだ人間は物凄い形相になる、という設定も高山竜司の死亡シーンのために消されたんだろう。

死後高山竜司の胃から出てきたメモや、何故か郵送されてきたイラストも、今作で突拍子もなく出てきたもので、イラストは最後に「実は最初っからこうなるって分かってたんですよ」という使い方をされるが、納得できる人は少ないだろう。
ホラーやSFとして描くなら、超常現象は貞子だけにする、もしくは高山竜司や高野舞の能力はもっとささやかなものにするべきだった。

一番辛かったのは高野舞と安藤満男の会話の分量が多く、それが面白くないこと。邦画の悪いところだと思うが、「ボソボソと独り言風に喋る」→「そうですよね?」と質問する、という会話パターンが多くてリアリティが感じられなかった。高野舞、映画版リングじゃそんな喋り方じゃなかっただろ。貞子になったら明るい喋り方をするからそのギャップのために演技を合わせたんだと思うが、元々のキャラクターはその明るい方に近いと思う。
そんな違和感を覚えながら濡れ場になっても面白みは感じられない。

リングでは問題に感じなかった古臭さも、今作だとキツい。呪いのビデオを見た安藤の顔をぐるぐる回して撮ったり、過去のシーンがぽわぽわ光っていたり、濡れ場もそうだがカラオケの安いPVというかトレンディドラマっぽいというか……。安藤が暴れて殴られるシーンの効果音が昔のアクション映画の「デュクシ!!」って効果音だったのには思わず笑った。
影山影司

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