みおこし

象のみおこしのレビュー・感想・評価

(1957年製作の映画)
3.8
太平洋戦争の最中。空襲により動物たちが脱走してしまうことを懸念し、戦時猛獣処分が行われたという悲しい歴史を元にした秀作。エノケンさんがコメディ演技を封印し、極めてシリアスな作品でした。

あの有名な児童文学『かわいそうなぞう』は、個人的にトラウマレベルで辛いお話だったのですが、まさか同じようなテーマで映画化するなんて驚き...。
モノクロの画面とエノケンさんのシリアスな演技もあいまって、より悲壮感漂う世界観。象さんの登場シーンはかなり少なく、もちろん直接的な描写もないのですが、それでもなおひしひしと伝わってくる強烈なメッセージ。
随所に挟まる子供たちの象さんに向けたあの歌声も逆に切ない...。

とにかく動物への愛に溢れた飼育員役に扮したエノケンさんの抑えた演技。実際に戦後間もない頃の映画だからこそ滲み出るリアリティを感じました。
そして小林桂樹さんもお若い!苦肉の策で猛獣処分の判断を下さなければならない所長役で、こちらも素晴らしい演技でした。

エンディングも秀逸。二度と同じような時代を繰り返さないように、という切実な願いが込められた、隠れた傑作でした。
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