キットカットガール

初陣ハリーのキットカットガールのレビュー・感想・評価

初陣ハリー(1926年製作の映画)
4.5
東京国際映画祭2019
山崎バニラさんの活弁小絵巻にて

【初活弁体験記録】

 生まれて初めての活弁、無声映画、漫画映画(同時上映『動物オリンピック大会』)、スラップスティック(本作『初陣ハリー』)、上映時間90分/500円(学生料金)で価値ある素晴らしい経験が出来た。この上なくプレシャスでプライスレスな思い出。会場の一体感とライブ感、たまらなく楽しくて、幸せで、心地良くて、ライブならではの緊張感が完成された映画とは異なりユニークで面白かった。本当に貴重な体験になった。有難い!

 まず活弁について、上映前に活弁についての基礎を学べて良かった。基礎知識があった方が確実に活弁を楽しめると考えていた為山崎バニラさんの公演を最初に選んでアタリだった。とても興味深くてタメになった。活弁入門者もウェルカム!と招き入れてくれる温かい空間で居心地良かった。

 活弁は日本独自の文化と職業らしく、日本に生まれ、こうして身近に機会がある事に幸せを感じた。(ちなみに、海外では生演奏又はレコードのみらしい。)

 台本は弁士が各々書いているらしい。台詞だったり、ナレーション、補足説明、豆知識、役者・監督に関するの解説、描写、弁士の個人的感想やツッコミ、時事ネタなど、本当に古い作品でも今の時代を感じさせるスクリプトだと一気に親近感が湧く。その時々でおそらく台本がちょいちょいアップデートする為、それもライブという点で面白い要素だと思った。一期一会、その時の物語がそこに存在して、その時の弁士のコンディションや心情でニュアンスやイメージが変化する。とっても面白い。
 つまり、弁士の数だけ作品への表現がある。その為、受ける印象も様々。弁士によって映画の訳し方、音楽・効果音も異なるから同じ作品を違う弁士で観比べるのも楽しそうだと思った。個性を感じられるだろうし、お気に入りの弁士さんもできるかもしれない。加えて、作品への新たな見解も得られるかもしれない。新しい!

 活動弁士はピアノ、笛、太鼓、三味線、大正琴などを弾きながら、声色をコロコロ変え、ナレーション、アテレコ、効果音を発するから本当に器用でなくては出来ないプロフェッショナルな仕事だと、アーティストだと感銘を受けた。尊敬しかない。

 映画を観ていて、やっぱり時々退屈さや長さを感じてしまうシーンがあるけれど、そんな所を敢えて突っ込み、活弁の力で盛り上げるスタイルが何とも画期的で感動した。本当に凄い!映画の補助に、完全にアシストしていて、きっと普通に観ただけだったらつまらないであろうシーンも一気に面白く、見所にしてしまう。まさに魔法で、巧みな話術に唸りが止まらなかった。そして、昔の映画あるあるの意味不明な箇所だったり、謎さ、不自然さを、率直に代弁してくれる山崎バニラさん。共感の嵐で沢山笑えた。

 そんな活弁は、副音声にどこか似ている為今の時代にも受けるのではないかと思った。映画『カツベン』の影響も後押しし人気が出そう。是非この文化をこれからも守っていってほしい。

 それにしても、本当に涙が出るほど笑ったのは久しぶりだった。映画で笑ったのも久しぶり。映画に対しての絶妙なツッコミと間。漫才を見ているみたいでとっても面白かった。会場もつられ和気藹々となり、声を上げて皆んな大笑い。童心に返ったように脇目も振らず楽しんでしまった。

 そんな訳で、すっかり山崎バニラさんと活弁の虜になってしまった。もう一度観たい!この熱い想いが抑えられない!確実に私の趣味の仲間入りをした活弁さん。

 本作の感想はというと、『初陣ハリー』は大女優ジョーン・クロフォードのデビュー作という事で、観られて本当に嬉しかった。又、主演のハリー・ラングドンさんの愛らしさ、可愛らしさといったらもう...。竜巻の如く現れ一瞬でハートを掻っ攫っていった。雰囲気は国民の弟。笑
 あぁもう一度観たいな!繰り返し観たい!アンコール!活弁入りのDVDが欲しいな。本末転倒かもしれないけれど。

 来年の東京国際映画祭も是非、活弁を観に行きたい。今からもう楽しみ。


✴︎玩具映画と呼ばれるものがあったとは知らなかった。玩具映画を扱う「おもちゃ映画ミュージアム」が京都にあるみたいなので是非訪れてみたい。

✴︎スラップスティックって面白い!

✴︎公演後に普通に弁士さんに会えるから、直接感想を伝えられていい!近さを感じる。