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溝の中の月のooospemのレビュー・感想・評価

溝の中の月(1982年製作の映画)
4.2
ジャック・ベネックス監督作品、
彼の作品ってどことなく野蛮な空間があって、ビビリなわたしはいつもオロオロさせられる。溝の中の月というタイトルの清らかなイメージを裏切り、オープニングから血を思わせる真っ赤と不穏な音楽。下品な売春婦が全裸で踊るバー。乱れた若者言葉。こんなに生理的に嫌気の出る空間なのに、惹きつけられてしまう神秘的な情感がこの映画にはある。

突如天使のごとく現れるロレッタの演出には、ジャック・ベネックスによる女性の神秘への畏れや崇拝、夢想と現実を行き来する偶像としてへの憧れなどが凝縮されているようで眩しい。そんな恍惚がロレッタの登場を界に幾度となく続いていく、そんな、神々しい映画。単調な野蛮さの中に秘められた人間性の複雑さ、ヒステリーを起こすほどの情愛、女性に対する永遠の謎めいたイメージが、映像の波の中に見え隠れする。美しい。
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