オジサン

極北の怪異/極北のナヌークのオジサンのレビュー・感想・評価

4.5
冒頭の字幕で告げられるナヌークの餓死
映画全体にそれが影を落とす
「何かを食らう」ということが、「生きる」ということが、強烈に画面から伝わってくる
そして、これが「ドキュフィクション」、今風にいえば「ヤラセ」のドキュメンタリーであったという事実が、この作品の魅力を作り上げていると気がつく
ジョン・グリアソンが「ドキュメンタリー(語源のラテン語は教育・証拠の義)」という言葉を不愉快に思っていたのがよく理解出来る
ドキュメンタリーは出来事の証拠としては機能しえない
グリアソンのドキュメンタリー定義はニュース映画や教育映画との差別化の中で生まれている
寧ろスタジオの外を背景にした劇映画として構想されている
僕らが注目するべきは、その一種の劇映画、即ち虚構が、強烈に現実の感覚を纏うという事実である
その力は表層的に現実を撫でることしか出来ないニュース映画にはない
この映画はドキュメンタリーが虚構に対して無限に開かれていることを示していると思う
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