めばち子

新・猿の惑星のめばち子のレビュー・感想・評価

新・猿の惑星(1971年製作の映画)
5.0
子どもの頃何度もテレビで観て分かっていてもラストに震える。
にしても昔より今こそ響くのは、一連の北朝鮮のミサイルやそれに対するトランプの発言を見るにつけ、本作及び旧シリーズが、人間の、もっと言えばアメリカと言う国の愚かさと、その元となる矛盾についての物語であり、それをエンタメに昇華している素晴らしさによるものだからだと言うことを改めて知るからだ。
自由平等と民主主義を高らかに謳いながら、一方でどこまでも差別的で国のためには人を殺すことも厭わないその矛盾が、やがて一つの国だけでなく世界及び地球そのものを滅亡させてしまう危険性。そのことを猿対人間の対立を通して描きながら、その実ここでの猿は我々そのものであると言う別の矛盾。
この二重のパラドックスが作品の根幹を成しながら、同時にコーネリアスとジーラと言う魅力的なカップルが放つ言葉や仕草、その細部に至るまでの動きの数々の緻密さが、彼等を猿から人間へ、同じ生き物として自分たちと対等であると思わさせるその力が、我々の足下をぐらつかせ、我々を二重のパラドックスへと放り込み混乱させる。
一級のエンタメでありながら、どこまでも政治的で、寓話的でありながら我々の近い未来の暗示でもある。本当に凄い作品だ。
めばち子

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