本能的な美への情感を掻き立てるような素晴らしいカットの数々。美しさと恐ろしさの綯い交ぜになった耽美さは絶望的ですらある。ひょっとしたら地獄は天国より美しいのじゃないだろうか。そこには「燃えたつ」という言葉がしっくりくる。炎だけでない、水も、木々も、廃屋もまさに燃えたつようにその本質を剥き出しにして広がっている。盛んに脈打つエネルギーの断面が突きつけてくる凄みに圧倒されて呆然とする。
その迷宮に迷いこめば人間など簡単に狂ってしまうに違いない。生きることは殺すことで、そこに始まりも終わりもない。人の意思は前に進むのにはじめて覚醒する。時間も距離も目的も、宇宙が一方向のベクトル上にあるから僕らは思考できる。しかし突然そこから切り離されて、全ての因果が同質になった奇怪な世界に放り込まれたらどうだろう？僕は僕を忘れずに歩き続けられるだろうか？
