いろどり

ガッジョ・ディーロのいろどりのレビュー・感想・評価

ガッジョ・ディーロ(1997年製作の映画)
4.3
思いがけない良作に出会った。
ルーマニアに住むロマ民族と、放浪のフランス人青年との交流の話で、主役とヒロイン以外は全員が本物のロマ。

ロマ民族は日本ではジプシーと呼ばれることが多いけど、ジプシーという言葉には侮蔑的なニュアンスがあるらしい。そのため、ジプシーではなく、ロマと呼んだほうがいいということ。

同じロマ民族を題材としているもので
「鉄くず拾いの物語」では、死への階段を上っているような一家でロマ民族の社会的差別を目の当たりにした。

でもここでのロマ民族は貧困ながら音楽とお酒と踊りで楽しそうに身を寄せあって生きている。
始めは外から来たフランス人ステファンを受け入れられず排他的だった村人たちが、屈託のない笑顔でロマを受け入れようとするステファンに心を開いていく心温まるストーリー。

ハーブを直接、体や髪にこすりつけて洗ったり、やたら唾をはいたり、ステファンと同じ視点で異文化を楽しめる。

そしてロマの服装が可愛すぎる!
民族衣装でロマの民族音楽を踊るヒロインが可愛くてずっと見ていたい気持ちになる。動物の出てこないクストリッツァ映画みたいで本当に最高。

そんな心温まる展開に完全に油断していた私は、社会問題を折り込めた怒濤の後半に衝撃を受けた。

コミュニティの中では民族の文化を大切に、お酒と音楽と躍りで楽しそうに前向きに暮らしているように見えても、組織に組み込まれて生きていくことは避けられない。差別は彼らの笑顔の裏にある厳しい現実なのだ。

一側面を見ただけで知った気になるのは私も同じだ。多角的な視点を持ちたいからこれからも異文化の映画をたくさん見ていきたいと思う。
ガッジョディーロは"愚かなよそ者"という意味。映画の視聴者もまたガッジョディーロなのだ。
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