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大人は判ってくれないのSadAhCowのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
4.5
2021 年 9 本目。

戦後世代に属するフランスの若い映画作家たち ”ヌーヴェル・ヴァーグ" の存在を一躍知らしめたトリュフォーの処女長編にして代表作。映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』の激辛映画批評で知られていたトリュフォーの作品ということで、それまでトリュフォーにこてんぱんにされてきた監督たちが「仕返し」をしてやろうと目論んでいたら、なんと 1959 年のカンヌ映画祭で監督賞を取ってしまうという…笑

主人公はトリュフォーが自身の子供時代を多分に投影させている 12 歳のアントワーヌ・ドワネル。素行も成績も悪いドワネルは、学校では先生に疎まれ、家に帰れば仕事の愚痴ばかりぐだぐだと喋る父親と、息子をほぼネグレクトしている母親の顔色をうかがう生活。ドワネル自身はいたずらっ子ではあるけれど、性根が腐っているというわけではなく、むしろとても素直でかわいいところがある。腐っているのは大人だけ。まさに「大人は判ってくれない」のである。

トリュフォーはその後も、『二十歳の恋』(1962 年)、『夜霧の恋人たち』(1968 年)、『家庭』(1970 年)、『逃げ去る恋』(1979 年)などの作品で、ドワネルを主人公に据えている。本作も含めて、これらの作品は「ドワネルもの」と呼ばれている。監督と主演俳優ジャン=ピエール・レオ、そして観客が同時に歳を取るシリーズになっている。

DVD には本作のカメラテストの様子が収められており、主役に抜擢されたレオーと、アルメニア系のリシャール・カナヤンのテスト時のやり取りを見ることができる。本作ではレオーが主役となったが、カナヤンは本作でドワネルの級友、そしてトリュフォーの次回作『ピアニストを撃て』で主人公の弟として出演している。
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