JUNPEI

大人は判ってくれないのJUNPEIのレビュー・感想・評価

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)
5.0
久々の再見。オールタイムベストのひとつ。
1959年、ヌーヴェル・ヴァーグはこの作品と、ゴダールの『勝手にしやがれ』から始まりました。映画評論家としてカイエ・デュ・シネマで執筆しながら、短編をいくつか撮ったのち長編第1作目として27歳でこの大傑作を生み出したトリュフォー。自身の出生を元にした自伝的なこの物語は後に20年間にも及ぶアントワーヌ・ドワネルの冒険としてシリーズ化されます。

なんと言っても、主演のジャン=ピエール・レオーの訴えかけるような強い眼差しが見るものの心を揺さぶり離しません。トリフォーの分身でありもう1人のレオーであり、架空の存在である、アントワーヌ・ドワネル。現実にある辛く悲しい事柄から唯一彼を救ってくれるのは、映画でした。

映画が好きで好きで仕方がないトリフォーが撮ったのはその原点でした。だからこの映画を見るときはいつも、こんなにも時が流れ、国も言語も人種も違っていても何もかも超えて繋がっていることを実感でき、自分が持っている映画に対する愛をも思い出せてくれます。
そして、走り抜けるラストシーンの素晴らしさ。
カメラを向き彼のアップに被さるFIN 。アントワーヌ少年時代の終わりと、トリフォー自身の過去への決別。終わりの先。新しい波はこのFINからはじまったのです。
JUNPEI

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