Echoes

フォーリング・ダウンのEchoesのレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
-
映画冒頭マイケルダグラス演じる主人公は酷い渋滞にはまりとにかく我慢がならない。視界と耳に入るもの全てに対して腹を立てる中、カメラは路上のサラ金の広告にフォーカスする。この映画の主題を暗示するかのようだ。
車を乗り捨てて渋滞を抜けた後も主人公のイライラは収まらずブチ切れ続ける。怒りの対象は英語の発音がおかしい移民だったり、値段がちょっと前に比べて1.5倍になったコカコーラや必要な人に金を貸さない銀行や会員制高級ゴルフクラブを利用する老人だったりと(他にも色々ありすぎるのだが)主人公はグローバリズムや野放図な資本主義を憎むようだ。トランプ支持層のメンタリティと重なる部分があると感じながらも、自分の思い込みだろうかと思いながら観ていた。
それが全くの的外れでもないかなと思ったのは、主人公が自分を「時代遅れの存在」と述べ今までいかに真面目に働き国に貢献してきたかを主張したあたり。トランプは自らの支持層を「忘れられた人たち」と呼ぶが、その二つがリンクして仕方ない。主人公は軍需産業企業を最近クビになったことが劇中明らかになるが、そのあたりもラストベルトの製造業がダメになって失業した「忘れられた人たち」と被る。
トランプが大統領になる20年以上前にこの映画が作られていたことから、ありがちなパニックスリラーと思いきやアメリカ社会の抱える病巣がいかに根深いものかということを認識させられる意外と社会派な映画だった。
あとロバートデュバル演じる定年退職間近の刑事が、主人公と同じようにこれまでの人生で不遇な目にあいながらもなんとか踏みとどまって闇落ちせず職務を遂行するあたりセブンと被ったし、主人公が美容整形外科にブチ切れるあたりファイトクラブを思い出した。
Echoes

Echoes