朧気sumire

ボルベール <帰郷>の朧気sumireのレビュー・感想・評価

ボルベール <帰郷>(2006年製作の映画)
4.2
この物語は激しく私の好みだった。なんとも言えないカタルシスが鑑賞後も尾を引く。だがなんといってもカメラワークが一番印象に残りました。
女に向ける男の熱い目線のようなカメラワーク。それも恋人同士で交わすロマンチックなものではなく、女の合意なくその裸体を覗いている卑しい目線。

キッチンに立つライムンダを俯瞰視点で捉えて胸の谷間を映したり、パコがパウラの鼠径部を凝視するシーンだったり、カメラレンズそのものが欲情した男の眼になってるアングルが結構多い。
正直、私は見ていてセクハラ男に遭遇した時と同じ嫌悪感が突き上げてきた(笑)

でも嫌悪を催しながらも美しいとも思った。死んだはずの母親が出てくるシーンやライムンダが血に濡れた包丁を拭うシーンとかほんのり芸術的で、これがプロの力なんだなともしみじみ。
このカメラワークは見ていて本当に綺麗。下劣な性欲に染まってるけども不思議と綺麗。このカメラワークだけでももう一度見たいと思う。

静かな雰囲気なんだけど二転三転していく物語も本当に好き。
「これ母娘が死体を隠せるかどうかのサスペンス劇?あれ死んだ母親が出てきた。幽霊の出るちょっといい話な映画か…?」と見ながらグルグル考えていたら、欠片も予想できなかったまさかの真相と結末。
あのやけに性的な目線のカメラワークにも意味があったと理解。そして母親の愛は強いなと感じた。
朧気sumire

朧気sumire