SHOHEI

ふたりのSHOHEIのレビュー・感想・評価

ふたり(1991年製作の映画)
3.7
尾道に暮らす中学生の北尾実加とその姉千津子。秀才の姉と比べられ自分に自信を持てずにいる実加。しかしある日不慮の事故で千津子は亡くなってしまう。それから母は精神的に弱り家庭は静まり返るように。一年後、実加の前に千津子の霊が現れる。千津子はさえない実加を励まし、彼女は段々と見違えていく。

大林宣彦の新尾道三部作の第1作。原作は赤川次郎の小説。本作はもともとNHKで2週にわたって放送されたドラマの中学生編、高校生編を再編集した劇場用作品。ナレーションが削除され、未使用映像が追加された。ふたりの姉妹が支え合うハートフルな映画かと思いきや実際は予想以上にヘヴィな内容。周囲から慕われた姉との死別。妹の実加はドジでクラスメイトから皮肉や嫌がらせを受ける。母は長女の死以来ノイローゼで、父は単身赴任先で不倫。緊張感の張り詰めた家庭環境の中で実加は自分自身を見つめ直していく。鏡の中の姉と向かい合うクライマックスシーンと、そのあとの「千津子の妹でも、実加は実加」という母親のセリフが良い。誰かになるのではなく、自分らしさを見つけることが大切なのだというメッセージに聞こえた。大林映画に欠かせない俳優尾美としのりは尾道三部作の頃よりはるかに大人びている。でもなんとなく語り口調がロマンチストっぽくて気持ち悪い。実加の父を演じる岸辺一徳のセリフも父親としてデリカシー的にそれはどうなの、というものが多くて気味悪かった。彼らのキャラクターが生理的に好きになれなかったのと、重たいストーリーに面食らった以外は好印象に感じる部分も多い。映画初出演で主演を務めた石田ひかりのあどけなさ、反対にキャリアのあった姉役・中嶋朋子の大人びた感じがそのまま姉妹の関係性に表れていて素晴らしい配役。特に石田ひかりの不思議ちゃんの雰囲気とウィスパーボイスの語りが可愛らしい。オーケストラと雷鳴が共鳴し合う場面とマラソンのシーン以外、分かりやすい大林演出は控えめ。テレビで大衆向けに流すことを考えて過剰な演出は抑えたのだろうか。とはいえエンディングでは久石譲のメロディにのせて大林監督の味わい深い歌声が聴けるのでファン的には大満足。
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