コリドラス

楢山節考のコリドラスのレビュー・感想・評価

楢山節考(1983年製作の映画)
3.7
かつて日本が貧しかった頃の姥捨という風習を様々な部落の掟と共に描くカンヌパルム・ドール受賞作品。

描かれているのは生々しいまでの「生」。ヘビがネズミを丸呑みしたり、カマキリに捕食されるカエル。人間も自然界の中では同じことで次世代へ命を繋ぐために善悪などないのです。

そういう意味では西洋的なヒューマニズムに対するアンチテーゼなのでしょう。

本作は現在の価値観で論じてはいけない作品でもあり、70歳になってお山の神様のところに行けると喜ぶおりんの姿には気高さすらあります。

次の世代に迷惑をかけてはいけないと勇退するわけですが、おりんのように受け入れられる人ばかりではなく、泣き喚いて縄でぐるぐる巻きにされて連れて行かれる老人もいる。

このあたりは現代人の死生観にも通じる。

そしてこの作品は現代でも議論される現役世代対シニア世代の世代間闘争の側面もあるのかなと思いました。

ともあれ超高齢社会を生きる我々が今一度向き合ってもいい作品かと思います。

ちなみに舞台となった長野県にある姥捨には昔行ったことがあります。姥捨駅からは名物棚田が一望できて日本三大車窓の一つでとても美しいところでした。

「わしも山へ行く歳だでな、歯がダメだで」
コリドラス

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