COZY922

レオン 完全版のCOZY922のレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
4.8
父娘愛ではなく兄妹愛でもなく男と女にもなりきれない愛。微妙なバランスの危うい関係の中の確かな情愛の存在と 哀しくも一種の美しさを感じるエンディングに心臓を素手で掴まれるような気持ちになる。

容赦ない殺戮を遂行する孤独な殺し屋レオンと、愛を知らずに育ち家族さえも殺され心も体も1人になった少女マチルダ。凄腕の殺し屋ながら仕事外は不器用なレオンが子供のよう。マチルダは12歳の年齢に似合わない成熟した大人の口ぶりでそんなレオンを翻弄する。境遇の似た、精神年齢が逆さまの2人。相手の中に自分を見つけ無意識に心が寄り添い、同時に自分に無いものを見つけ対極の磁石のように引かれ合う。そんな関係と独特の閉じた世界観にどうしてこんなに魅了されるんだろう。

完全版は実は初めて観た。追加されたシーケンスの、レオンの過去についての告白は2人に共通する傷みを浮き彫りにし、やはり2人は会うべくして会った奇跡のような関係なんだと思えてくる。仮装ゲームをするシーン、観葉植物と荷物を抱えて街を歩くシーン、レオンの腕枕でマチルダが眠るシーン、2人の時間がいちいち愛おしくてたまらない。

ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマンの3人がとにかく素晴らしい。ジャン・レノの不器用な温かさを秘めた渋さ。汚職まみれの麻薬取締官のあのイカれっぷりはゲイリー・オールドマンの怪演あってこそ。そしてこの時13歳のナタリー・ポートマン。少女から女に変わるギリギリの線上の限られた時にしかできない、まさに絶妙のタイミングでのマチルダだった。

哀しいけれど、レオンもマチルダも暗黒の世界から解放され、最大の切なさを伴う究極のハッピーエンドなんだと思いたい。。レオンに大切に育てられた植物が、きっと根を張り穏やかにマチルダを見守り続けてくれるだろう。
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