おくむらひ

レオン 完全版のおくむらひのレビュー・感想・評価

レオン 完全版(1994年製作の映画)
3.7
現在の視点だと結構しんどいのが、プライベートが不甲斐ないハードボイルドな男が、悲惨な境遇の女児を庇護してそのうち言い寄られるという構図。不器用でも血が繋がらなくても親子になれるということではなく、小児性愛を仄めかすのが本当に危険だ。それでも最後まで一応観れてしまうのは、ギリギリもギリギリだが一線は越えないという倫理と、一貫した美意識の撮影と編集に支えられているから。具体的には、シネマスコープ比率に合わせたデザインの行き届いた画面。登場人物の動作に連動して繋がる編集や高く設定された色温度。あとは美術なのだが、それらからエヴァーグリーンな90年代カルチャーの風味を受け取ってしまう。まぁジャンレノが叫ぶカットは笑っちまうが。
音楽で言えば、Saint Etienne、Cloudberry Jam、The Cardigans、Everything But The Girl、Björk。そして橋本徹のSuburbia Suite:Ever Green Review。あとフィッシュマンズやその他渋谷系も含まれるのかな。手が届かなかった90年代の箱庭的でエヴァーグリーンでお洒落なカルチャー消費に無条件に憧れてしまうのだが、映画で言えばその並びにこの作品が入ってくるのかもしれない。ちなみに97年生まれです。ドライブ・マイ・カーにはその幻影を見出していたのかなとか考えつつ、このカルチャーは決して自分のものにならない事実に悔しさを覚える。自分事として引用できる90年代カルチャーはやはりRadioheadだし、巷では今まさに「エモい」とか言ってる訳で。シリアスに社会問題に向き合うか、もしくはエモさに逃げるかしかない時代に生きていることを突きつけられた。
俺だって現在の視点だとしんどいとか言わないで、公開当時に劇場でこれを見てお洒落に消費したかったってのに。伝わります?
おくむらひ

おくむらひ