1935年の『ゴルゴダの丘』をやはり下敷きにしているのか、そこかしこに既視感を覚えるところがあった。
ただこちらはメル・ギブソンの主観的要素が多い。サタンの登場は必要だったか。ゲッセマネの園でのキリストの苦悩の祈りの場面ではサタンではなく、聖書によればむしろ御使いが来てイエスを支えるのでは。
鞭打ち、磔刑、とにかくキリストを痛めつける表現は過剰かと。人間の罪の重さ、そしておそらく監督自身の罪意識を表現したいという気持ちはわかるが、他に方法はなかったのか。
ヴェロニカが出てきたのと、『ゴルゴダの丘』と同じく母マリアの登場が多かったので、調べてみるとやはりメル・ギブソンはカトリックらしい。
言語をアラム語等にするなど時代考証へのこだわりと、ヴェロニカなどの伝説が同居するあたりが不思議だが、監督のなかでは矛盾しないのだろう。
正直死ぬまでに観たい一本かと言われると疑問。