見ているのが重くて怖い。なのに美しく、とても繊細な描写に引き込まれる映画。
ジェーン・カンピオン、女性の監督さんです。それだけに女性ならでは、というか男性には描けない繊細な描写が多く、僕はちょい気持ち悪かった。多分、女性特有の感性なのでしょう(もちろん全ての女性がそう感じるとは思ってない)。
一つの前提として、主人公エイダ=ピアノです。ピアノは物体としてのピアノであると同時に、口のきけないエイダの心、感情を繊細に表現している。
ピアノを置き去りにした夫スチュワートへの憎悪、ピアノを取り戻すのにベインズと交わされるディール、ベインズとの関係が愛に変わっていく過程、それを言葉もなく些細な表現で演じている。主役のホリー・ハンターの恐ろしい演技、本当すごいと思いました。
波打ち際の砂浜に置き去りにされたピアノ、これはエイダの深い悲しみ、憎悪を美しさと対比して印象づけるのに凄いインパクトだった。それに対し、エイダのタイツの破れた穴に指を入れ、指で肌を撫で回すベインズ、ピアノを弾くようにスチュアートの肩をたたくエイダ、こういう地味ながら女性的な描写は、とてつもないエロチズムを感じる。
ラストはどうなんでしょう?ピアノと沈むエイダ、このまま死の結末だと、本当に私はピアノになってしまう。そうしなかったところに、希望と光を見いだせる(正直、僕的にはピアノと海に落ちていく結末でも全然良かったと思います)。
子供役のアンナ・パキンは11才でアカデミー助演女優賞をとる位、素晴らしい演技。
加えてマイケル・ナイマンのあの有名なメロディーにのせて展開するストーリー、正直嫌いな映画だけど、名作だと感じました。