Grace

長江哀歌(ちょうこうエレジー)のGraceのレビュー・感想・評価

4.0
この作品を観るまでは中国映画をあまり観ていませんでした。映画好きの友人のオススメで観ました。

淡々とした流れで静かな作品ですが、中国で大きく長い川の長江の河流や三峡ダム建設によって水没していく運命にある歴史ある古都「奉節」を映し出す映像の美しさ、まるで水墨画を見ているような綺麗な島(10元札に描かれている島)。そして、町の風景や人々の日常的な生活環境や環境の変化にどう対応していくかを映し出し、人間ドラマ溢れるとても良く出来た作品だと思いました。

中国は都市と田舎との貧富の差が激しく、この作品からもそんな中国の社会情勢を映し出しながら、山西省からこの作品の舞台である奉節へ男女2人が訪れる。その男女2人は、16年前に消息が途絶えた妻子を捜す男ハン・サンミンと2年前に音信不通になった夫を捜す女シェン・ホン。その2人が、古都「奉節」の住人達との交流によって捜し求める人を捜し出す。私は、うっかり男女2人それぞれ接点があり知り合いなのかと思いながら観ていたのですが、そんな接点はなく、山西省から奉節へ愛する人を捜し求めてきたというとこだけが同じなだけでした。
中国人にとって日常的な生活にある品物のタバコ・酒・茶・アメ・携帯電話・バイクで話を繋げていき、人々が変化していく町の中で生きていかなければならない様子と男女2人がその土地の人々と交流しながら愛する人を捜していき、古都「奉節」がダム建設によって埋没していくのが、とても切なくて悲しい。長江に面している町や島は、美しく綺麗な歴史あるものなのに。ダムは、とても便利なもので良いものなのだろうが、人々の生活の妨げになっていくものは便利で良いものなのだろうか?と疑問に思いました。私は日本で有名なダム「黒部ダム」を見たことがあります。とても大きなダムでした。この作品を観て、黒部ダムの建設している時代にこの周辺に住んでいた住人はどうだったんだろうか?と思いました。

中国映画をあまり観ない私でも淡々とした静かに織り成すストーリーと古都「奉節」の美しい風景に魅了され、2人の男女を通して交流する人々の温かさが良かった。そして、邦題の一部にもなっている哀歌(エレジー)のような雰囲気が絶妙にいい味わいがありました。こういう作品は、好き嫌いが分かれると思いますが、あまり中国映画を観ない私でも観て良かった作品です。
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