長江哀歌(ちょうこうエレジー)の作品情報・感想・評価

長江哀歌(ちょうこうエレジー)2006年製作の映画)

三峽好人

製作国:

上映時間:113分

ジャンル:

3.7

「長江哀歌(ちょうこうエレジー)」に投稿された感想・評価

美しい景観が失われるのか、失われゆく景観が美しいのかが限り無くシームレスでいい。無色を色として認識させるスケープデザインの統一感とかバックショットからの景観が相変わらず筆舌に尽くし難いジャンクー構図で唸る。フレーム外にいたり、やけに見切れるように映るオッさんと、これ見よがしにやたら水をグビるチャオタオのエピソードは交わらないというより、単純に男女の対比ともいえるし、埋もれゆく者とそうでない者の対比でもあるのか。嗜好品であるタバコと酒、そうでもない?茶とアメをわざわざチャプタータイトルにしているのもなんかシンメ。ロイアンダーソンみたいなギャグは正直要らなかったとは思うが。
静かな傑作。好みで言えば『罪の手ざわり』よりも上かもしれない。
画面はアンビエント調に受け止められかねないような薄靄がかかっているようなトーンで大きな起伏もなく淡々と進行していくのだが、被写体となっている崩れかけた建物や黒光りする肉体、そしてあまりに広大な長江の存在感は我々に漫然とした消費を許さない。
彷徨い歩き続ける男と女に涙。
人々が生活を送る背後に中国の歴史を感じる。最初から船に乗っているありのままの人々を映し、その後長江の絶景を映すという映画のテーマをそのまま表すような感動的な始まり方だった。サンミンと妻が喋っている後ろで広大な解体現場が描かれるフレームインフレームの場面が、特にノスタルジーを感じる。途中建物が空に飛んだりシュールな映像が差し込まれるけれど、橋がライトアップされるっていうのも現地の人々にとっては同じくらい違和感を覚えるものなんだろうなと思った。

このレビューはネタバレを含みます

長江中流に建設中の中国政府が威信をかけた万里の長城以来の大構築物、三峡ダム。水没予定区域の建物の取壊しや住民の移転と生活激変を余儀なくされた町に山西省からやって来た2人の男女。炭鉱労働者のハン・サンミンは別れて16年経つ妻子を探しに、シェン・ホングは音信不通の夫に会いに…。この2人の物語を軸に変わりゆく町と人々の様子をドキュメンタリー風に映し取っている。人海戦術で建物取壊しする人夫たち、立ち退きに途方に暮れる住民、普及中の携帯電話の発着音、働き場所がなく売春商売する女たち、そんな状況に戸惑いながら2人は相手を探し求めてアチコチ彷徨う。杜甫、李白も愛した古代悠久な長江のほとり、開発進むイルミネーション、崩れ落ちる廃墟ビル、飛び立つ異形建物ロケット⁈、揺らぐヘッドライトとあまりモノ言わぬ旅人2人の周辺風景から心情を汲み取る。三千元で買った妻に逃げられ、親族のために作った新たな三万元の借金をこれから返してでも妻子に戻って欲しいサンミンの理由は一切説明がない、片やホングは新しい男との生活に入るための清算の旅路、過去の思い出に帰る人と新しい未来に飛び立つ人…。無辺の広大な中国にはドラマ題材が至る所に転がっている事を実感。開発15年経った今の洪水危機に瀕した三峡ダム周辺でもまた新しいドラマが十分出来そうです。
自分の住んだ街が沈む

少年が大人の歌を歌うところに何故かグッときた。
いま5分みてDVDを一時停止してたばこすってるところやけど、はい星5つ、てかんじ

では映画に戻ります。
ひたすら解体されていき、ダム建設によって沈むのを待つ田舎町が舞台。主人公の二人はどちらも外部からやってきているので観ている側と同じ視点でこの街を見ている。水の中に沈んだ後は観光フェリーのガイドで説明され観光客の一瞬の関心に残るくらいになってしまう。が、そんな街でも当然普通の生活があり、嫌々出て行く人もいれば素直に受け入れる人もいる。そのうち消失してしまうとはいえ、他の街とは変わらない生活者の親切さや気遣いに主人公たちは接し、いつの間にか彼らにとっても特別な場所となる。
山間の川を中心とした自然風景と、たて壊される住宅や工場といった人工物。ルックがどこを切り取っても絵になるほど美しかった。
また、時折りシュールというかチャーミングなところもあって、決して悲観的に重々しく描かれているわけではないところも良かった。
keitata

keitataの感想・評価

4.6
テーマはでかい。ボケは小さい。この数十秒のボケを観たいがために、ジャジャンクーを観るのかもしれない。
『帰れない二人』はこれのセルフオマージュだったのね、泣ける。
中国は三峡。国を挙げての一大事業、ダムの建設によって今まさに町が一つ沈んでいる。
そこにやってくる2人の男女。男は16年会っていない妻を探しに、女は2年連絡をとっていない夫を探して。
広大な自然との共存を諦め、「シンカ」に固執する中国の姿と、市井の人々の姿のコントラスト。しかし、彼らの収入源はそのダム建設の恩恵に他ならない。水没する自分の建物を守りたいと見える彼らも結局金を求める。
そんな人たちでも抒情的な画と音楽によって失われかけていた「心」を感じ取れる。その「哀愁」がこの映画の魅力。どれほど苦労しても、そのスピリットは内発的にわいてくる。無償で助け合い、お互いの認め合う。
無くなりつつある自然の無常、二つの夫婦の自然な末路。しかし、そこには人間ならではの「心」と、どうしようもならない「天命」的な理不尽がある。寂しくなりつつ、どこか見とれてしまう映画。
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