Genichiro

長江哀歌(ちょうこうエレジー)のGenichiroのレビュー・感想・評価

4.6
アジアに住む人間として、アジアの映画はなるべく見ようと思っている。韓国映画には緊張感がある、というか描かれるものは全て緊張関係と言っていい(恋愛映画ですら)。台湾映画のある種のゆるさは気を抜くと日本人が共感しそうになるが、その裏のヒリヒリとした空気感に気づくと全く違うものに見える。そして中国の映画はほんとにスケール感・タイム感が違いすぎて、なんなんだこれは…と圧倒される。これこそがジャ・ジャンクーの作品なのかもしれない。襟首を開けて扇風機の風を当てる場面の生々しさよ、エロすぎる。船の中で麺に醤油?甜麺醤?をかけただけみたいな賄い飯を食いながらの喧嘩とかもリアリティありすぎ。ビルの外壁によって切り取られた景色や労働者がバカでかい建物をカンカンやってるカット(こんなのいつ終わるんだよ…と恐ろしい気持ちになる)の途方もなさ。それだけで中国の現在を象徴するかのような画となる。そしてラストの綱渡り、その切れ味に崩れ落ちそうになる。こんなの他の国の人間に撮れるわけないと思わされる、圧倒的な一作。
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