にじのすけ

バトル・ロワイアルのにじのすけのレビュー・感想・評価

バトル・ロワイアル(2000年製作の映画)
3.8
北野武が震災直後の取材で「こういう大変なときに一番大事なのは想像力」であり、それはつまり、この震災は「『2万人の人が死んだ一つの事件』」じゃなくて「一人が死んだ事件が2万件あった」と考えることだと語っている。つまり2万通りの死に、それぞれ耐え苦しんでいる人がいる、という事実を考えることで初めて人の死の本当の重みや、被害者の悲しみに気づくことができる、ということを彼は言いたいのだ。
それで思い出したのだが、学生の頃、沖縄のひめゆり平和祈念資料館を訪れたことがある。こちらの展示室には200余名の犠牲となった学徒達ひとりひとりの顔写真と可能な限りの死亡状況が記載されたパネルが展示されている。一枚一枚ていねいに見ていくうち、言葉を失った。そこには確かにかつてこの世に生きた学徒達の証があったからだ。
深作監督は、15歳のときに戦争による友人の死を目の当たりにした経験が、本作製作のきっかけとなった、と語っている。
本作は娯楽作品の体裁を取りながらも、「お互い殺し合う」という極限状態での子供たち1人1人の死を限られた尺の中で可能な限り具体的に描くことで、北野武と同じメッセージを伝えたかったのではないだろうか。
私はそんなふうに考えています。
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