サトモリサトル

墨東綺譚のサトモリサトルのレビュー・感想・評価

墨東綺譚(1960年製作の映画)
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タイトルは「ぼくとうきたん」。
荷風先生を案内人に、今ではすっかりその名を聞くことも無くなったかつての赤線“玉の井”で繰り広げられる物語。
ラピュタのプログラムによれば、「濹東綺譚」の他に「失踪」と「荷風日記」の2編も織り交ぜた構成とのこと。

原作は大学時代に図書館で借りて読んで、読了したのかしてないのかよく覚えてないぼんやりした感想しか持っていなかった。
今回、映像を通して見て話の全体像がわかった。
iBooksで原作が無料DL出来るので後で読んで補完するけど。

セットの玉の井の街並みが浮世離れしていて、現代社会に疲れた男たちがやってくる隠れ里っていう雰囲気がプンプンだった。
山本富士子さん演じるお雪が最初はすごく明るくて溌剌としてるのに、後半起こる不幸な出来事と後々の病気ですっかり生気を失くしてしまっているのが見ていて辛かった。

でも、「どうなるかわからないけど、元気になったらまた働きますよ、一生懸命」と最後まで健気なお雪。

ラスト、灯火管制の敷かれた暗く人通りの少ない玉の井の町を歩く荷風先生。
そして、覗き窓から首だけ青白く覗かせ男を誘う女たちの表情で映画は終わる。

豊田四郎監督の作品は劇場で観る機会が何気に多くて、「暗夜行路」「甘い汗」に続いて3作目。

2016.2.10 ラピュタ阿佐ヶ谷