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ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのSHOHEIのレビュー・感想・評価

4.2
20世紀初頭のアメリカ。石油採掘業者のダニエルは幼い息子H・Wとともに油田を求めてサンデー家の土地にたどり着く。貧しい一家から破格で採掘権を買い取ったダニエルは石油を掘り当てるが、作業中の爆発事故でH・Wは聴力を失う。ダニエルはH・Wの将来に失望し、列車の中に置き去りにして彼を遠ざけてしまう。

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は「いずれ血に染まる」の意味で、主人公ダニエルの破滅と血を石油に見立てたダブルミーニング。強欲な石油王を演じるのはオスカー3度受賞のダニエル・デイ=ルイス。とにかく彼の迫真の演技で成り立っている映画。石油のためなら周囲との関係が悪くなろうとも土地の買収や採掘を行う金の亡者。息子に対し手話すら用いない父親。明らかにコイツはイイ死に方をしないというのが伝わってくる。デイ=ルイスは欲深く、傲慢で頑固な主人公を乗り移ったかのように演じきる。主人公に不信感を抱くサンデー家の息子、そして宣教師であるイーライを演じるのは若かりしポール・ダノ。こちらの演技もデイ=ルイスと良い勝負。信仰深いイーライと神すら見下すダニエルの対比、憎しみ合いが石油のように黒々としていて見応えある。キリキリした緊張感漂う音楽はレディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドによるもの。同じPTAの『マグノリア』がイマイチだっただけに見始めは乗り気ではなかったが、次第に引き込まれた一作。2時間40分あっという間だった。
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