H4Y4T0

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのH4Y4T0のレビュー・感想・評価

4.0
初見だと理解するのに数時間、下手すると数日間は掛かりそうなので、鑑賞直後の意見・感想をまとめてレビューに綴ります。

案̀の̀定̀ポール・トーマス・アンダーソンらしいシュールレアリズムな世界観が目を引く本作。然し他作品に比べると、そこまで「難解なストーリー」に感じることはなかった。
物語が淡々と流れる中で二転三転する意表を突いた展開に引き込まれる一方、独特な手法で表現する「欲望」や「執着心」といった人間の薄汚い部分をひたすら描き続けた158分間。その大半が目を背けたくなるような衝撃的なシーンだったり複雑な心理描写だったりと、これらの演出は最早お馴染み。
ストーリー云々よりも(無論重要だが)その抜群のセンスと自身の感受性を試されるヒューマン・ヒストリー、といった印象。

舞台は二十世紀初頭のアメリカ西部。自称“石油屋”を名乗る男ダニエル・プレインヴューが周囲の人々を巻き込みながら、金儲けに没頭し「破滅」と「興隆」の人生を歩む姿を捉えた一代記。
交渉手段を厭わない度を超えたビジネスライクと、徹底的に「勝ち」にこだわる超絶ストイックな性格の持ち主だが真相は未だに不明。息子H.W.への偽りの愛情や、イーライ神父を敵対視する程『神』を憎む理由など様々な疑問が残るが故に本作の奥深さを感じる。
とにかくダニエル・デイ=ルイスの役作りに対する熱意が半端ない。

巨額の富を手に入れてもなお孤独な暮らしを望む理由は何故なのか、ダニエルがラストで放った言葉が意図するものは何なのか、物語の真相を語る上で「自分なりの解釈」をせざるを得ない作品。
H4Y4T0

H4Y4T0