おさむん

都市とモードのビデオノートのおさむんのレビュー・感想・評価

3.9
1989年とは思えない程、出てくる服が、いい意味で時代性を感じさせない。

耀司さんの服は、実際何十年も前のものでも、今着てもまるで違和感を与えないが、それは、耀司さんのクリエイションが、服がまだ"消費"されるものになる前のものから着想を得ているからだろう。
それらに新しいフォルムを与え、黒くしてしまう。色は、流行という観念において、とても重要なものだが、真っ黒にしてしまえば、流行という時間の流れから抜け出せる。それでいて、フォルムはあくまでもクラシックでありながら、同時に高い独創性がある。しかも、身体に根ざしたつくりであるから、人間の体が変化しない限り、廃れることはない。

かくして、耀司さんの言うとおり、"十分新しく"、同時に、"永遠のクラシック"と呼べる服が生まれるのであろう。

色には感情があり、あえて黒を選ぶことで、それらを覆い隠してしまうというのも、何故自分がこれ程までにyohji yamamotoを着るのかがわかった気がする。自分の感情だとか想いを真っ黒にしてしまって、自分の中に留めておきたいのだと思う。だから、yohji yamamotoを着ている時は、様々な自分の弱い感情に対して、強くなれたように思えるのだろう。

現代の人たちは、金持ちになったつもりで、なんでも無駄遣い(=消費)してしまい、人生すらも無駄遣いしてしまうというのは、すごくわかるし、自分の生活を振り返らされた。
おさむん

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