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ゴーストワールドの焂のレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
4.7
斜に構えたティーンネイジガールは健気で愛おしい、なんて思う自分はもうちゃんと22なのだと実感した。ダサい大人や退屈な社会となんとなく折り合いをつける前に思い切り反抗心むき出しで抗った彼女とそうでない若者では歳をとった時に見えてくるものが違うのだと思う。ラモーンズ のレコード、悪趣味な骨董品、80年代の新潮文集、自分より寂しそうなおっさんのマブダチを見つけて大切にしていた当時十七歳の自分がこんな映画を観ていたら、おそらく髪を緑にしていたかむしろ水を差された気になって黒染めでもしていただろう。イーニッドのことがすごく愛おしいと同時に、昔の自分を見ているみたいで体の一番あたたかいところがむず痒くなった。彼女の不安定で破滅的なところ、できれば絶対に1ミリも触れたくないし巻き込まれたくないし抱きしめてあげたい。わたしたちはみんな天使より無垢な生命体として産まれてきたから、ひねくれたいだけひねくれて、場末のシネマに少し飽きてきた頃にお気に入りの愛ややさしさだけを選べるようになっていたら良い。終盤のシーンでレベッカがイーニッドに「結局あんたはどうするの?」って聞いてる時の、瞳と唇を交互にまっすぐ見つめる視線の移り方がよかった、真似しよう。
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