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スワロウテイルのkaoriのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
5.0

何者でもない人間が、何者かになろうと葛藤すること。いも虫が蝶になろうと踠くこと。
私の中の青春の定義を明確にしてくれた映画。

この定義で言えば私は一生青春を続けるんだろうと思う。何者かになりたくて、何者にもなれず、悶々と葛藤し続ける。この映画はそんな私にとっての救いです。


イェンタウンたちは戸籍もお金も名声もなく、帰る場所や名前さえ持たない。もしもその生活から脱することができないまま野垂れ死ぬのなら、誰も彼らが生きていたことを証明してくれない。
清々しいほど”何者でもない”彼らが、何者かになるためには何を手に入れれば良いのか。
その答えを映そうとした映画と解釈しています。

すごく印象に残っているのは、物語の最初と最後に映されるふたつのお葬式のシーン。謎の儀式をしているところは似ているけど全然印象が違う。
最後のお葬式シーンは、やってることはお葬式のはずなのに向き合っているものは死よりも生という感じがした。その人が生きていたことを必死で証明しようとしているような。
何だかすごく胸を打たれたけどうまく解釈しきれていないのでもう少し考えてみたい大好きなシーン。


良い映画のエンドロールで感じる、喉の奥が涼しくなって胸がいっぱいになる感覚を人生で一番感じられた作品。あまりにも好きすぎて、初めて観た日の天気や布団の匂いを覚えてるくらい。
沢山の人に、できるだけ若いうちに観てほしい傑作と思っています。是非どうぞ。
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