おるふぇ

スワロウテイルのおるふぇのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
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伊藤歩の演じるアゲハの透明な存在感がすばらしくて警察署の葬式シーンで一瞬で引き込まれた。『失われざる十年の記憶』に収録された小論のひとつで松下優一が、劇場公開当時の日本の風景と密接に関連していたという話で(東京のイラン人街、九州にボートで押し寄せる難民、未だ閑散としていた埋立地)、今日では無茶のあるようなスラムの風景と東京を繋ぎ合わせることが、当時ではまださほど突飛ではなかった、想像力の下敷きの違いにぶち当たる。とはいえバブルの夢のごとく、それらは全て昔むかし……と過去形で語られていることによって、却って移民のステレオタイプな描写も失効することなく証言として生きながらえる余地を持っている。あと江口洋介イイ役すぎ。「クミチョサン、嘘ハヨクナイ!」「クビキレ」と言うときの笑顔が最高。