日本にある、設定上の架空の街、円都(イェン・タウン)が舞台。無国籍状態の猥雑でカオスな雰囲気と世界観が何とも言えない。
日本語・中国語・英語がチャンポンの会話に、90年代くらいの東京都心と思われる街の近くに阿片街や超貧民街、広い荒野までもが存在する都市空間という無鉄砲ぶり。ストーリーのほうも、移民の悲哀・刹那的な夢・金に踊り踊らされる世の中などいろいろ詰め込み、特定のテーマに絞って掘り下げることをあえて避けているかのように見え、それが 多種多様な人々から成るこの世界の、どこに行き着くのかわからない浮遊感を助長していると感じます。
ストーリーそのものよりも、独特の空気と映像と雰囲気ある音楽に包まれた濃密な世界観を味わう映画という印象でした。
ただ、これだけのキャストとユニークな設定を考えると物語としてもっと別の料理法があったのではとも思いました。俳優陣は総じて力演していましたね。江口洋介も三上博史もCharaもよかったけど、伊藤歩がひときわ印象深い演技と表情をしてました。
好き嫌いは分かれそうですが、類似ジャンルと言える作品があまり無く、良くも悪くも記憶に残る1本です。