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トラック野郎 御意見無用のSHOHEIのレビュー・感想・評価

トラック野郎 御意見無用(1975年製作の映画)
3.8
11トントラック「一番星号」のドライバー星桃次郎とその相棒「やもめのジョナサン」こと松下金造は自慢のデコトラで全国を駆け巡る。ある日、東北のドライブインで働くウェイトレスの洋子に桃次郎は一目惚れをしてしまう。しかし連れ込み宿にライバルドライバーの竜崎と洋子が入っていくところを目撃した桃次郎はショックを受け、彼女に心無い言葉を浴びせてしまう。

当時松竹が誇る『男はつらいよ』の双璧だった東映の『トラック野郎』シリーズ第1作。主演は東映ヤクザものでお馴染み菅原文太、そしてその相棒は愛川欽也。テレビ番組での彼らの共演がきっかけで誕生した人情喜劇映画で寅さんと同じくマドンナとの失恋がストーリーのお決まりの流れだが、失恋を知って相手のために何もできない寅さんとは違い、桃次郎は愛車がどうなっても相手のために尽くそうとする実に男らしい姿を描いているのが対照的。寅さんが日本人の奥手な性格を表しているのに対し、桃次郎は日本人の理想を描いているのだと思う。また殴り合いの喧嘩、カーアクション、下品な演出も本作は盛んに取り入れ、東映のヤクザ映画で培われた荒々しいカメラワークも味わえる。冒頭、緊急車両を偽り渋滞を抜けようとする主人公ふたりの振る舞いから、自己紹介的に彼らの性格や物語の方向性が見えてきてとても面白い。強面の菅原文太がマドンナ相手におどおどしてしまう描写も彼らしくなく新鮮で笑えるが、本人曰く「柄ではなかった」とのことで演技はやりづらかったそう。全体的にストーリーはとっ散らかった印象で実際捨て子を拾うエピソードなどは無くても良いような気もするが、登場人物の言動に勢いがあって見入ってしまう。寅さんのとんち的な笑いも面白いが、本シリーズも馬鹿馬鹿しい方向に笑いが振り切っていて面白い。
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