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小さな村の小さなダンサーのodyssのレビュー・感想・評価

小さな村の小さなダンサー(2009年製作の映画)
4.0
【いい映画だが、タイトルや予告編に難あり】

実はこういう映画だということは、見て初めて分かりました。
予告編だとかチラシ・ポスターなんかは子供姿ばっかり出しているので、子供のお話なのかと思っていたのです。おまけに邦題だってこれですしね。宣伝側も少し考えてくれないと。女性受けを狙ったのかなあ。以前も子供映画じゃないのにそういうふうに予告編で見せかけて問題になった洋画がありましたね。日本の映画輸入業界の良心が問われるところではないでしょうか。

それはさておき。

バレエ・シーンもそれなりに充実しているのでしょうが、私はバレエを見る趣味がなくて、残念ながら「多分、すごいんだろうな」という程度の感想しか書けません。バレエ・シーンについては、ですよ。

しかしこの映画の見どころは他にもあると思う。映画の原タイトルが「毛(沢東)の最後のダンサー」。文化大革命、そして毛崇拝の熱気がさめやらぬ中国からアメリカに渡ってバレエのダンサーになった中国人の青年。芸術と中国の思想的締めつけの中で芸術家として生きていく一人の人間の伝記映画として、かなり見応えを感じました。

アメリカに着いた主人公はスーツに毛沢東のバッジを付けている。平気で自国大統領の悪口を言うアメリカ人を前に、「大丈夫なのか?」と心配する。言うまでもなくその頃中国で毛沢東の悪口を言ったら牢屋行きですから。

圧巻は中国領事館が無理矢理に主人公を中国に戻そうとする場面でしょう。先進国なら「あり得ない」と叫びたくなるようなやり方で主人公を拘束する領事たち、そしてそれに毅然と対決するアメリカ人。こういうアメリカ人の姿勢は、日本人としても見習いたいものです。

そして最後は父母とも再会し、故郷に錦を飾ってメデタシメデタシ。ややパターンにはまった展開のようにも思うけど、こういう映画はこういう筋書きでないといけないんでしょうね。

それから――
この映画で目立ったのは、脇役陣が古典的な美形であることです。主人公にバレエを指導するベン役のブルース・グリーンウッド、弁護士役のカイル・マクラクランがいずれもハンサムだし、主人公の恋人リズ役のアマンダ・シュルも素朴なアメリカ美人のイメージ。こういう素朴な美人はかえって今どきの映画ではヒロインになりにくいんでしょうけど、私は変にアクの強い女優よりこういうタイプが好きだなあ。加えて、主人公の父母も結構イケてるんじゃないかと。お父さん役は、ちょっと周恩来に似てるように思いました。
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