COZY922

やわらかい手のCOZY922のレビュー・感想・評価

やわらかい手(2007年製作の映画)
3.9
難病で余命短い少年オリーの治療費用の工面に窮する家族。既に家も売却し借金の当てもない状況を見て、祖母マギーは何とかしようとする。が、銀行では担保や貯金がないことを理由にローンが組めず、大したスキルも職歴もなく年齢上の理由もあって職にもつけない。何が何でも孫を助けたいマギーが取った方法とは・・。

それが合法な職業であり合法的な手段である限り、働いて稼いだお金にきれいも汚いもない。孫の命を救おうと、自尊心や躊躇いをかなぐり捨て、覚悟を決めて風俗店で必死に働くマギーに純粋に心打たれた。確かに設定的にちょっと狙い過ぎた感はあるけれど、気がついたら彼女を全力で応援している自分がいた。

何でもやると口で言うのは簡単だが行動に移すのは難しい。世間体、プライド、経験値、未知の分野への恐怖、いろんなものが決断の邪魔をするのが常だ。マギーの決意に孫への惜しみない愛情を感じた。

本作は家族のために身を呈して奮闘する家族愛を表テーマにしつつ、実は、ここぞという時の女性の強さ・失っていた自信の回復・自己実現が真のテーマだと思う。当初ためらいはしたものの最後は自分自身が選択したこと、そして後悔も無いと自信を持って言えることはとても重要だ。自分が納得していて誇りを持ってやれるのならそれでいいのではないだろうか。

ご近所の有閑マダムとの茶会やストアで、マギーが腹をくくって仕事の話をしたり相手に切り返したシーンには、切なさの混ざった芯の強さを感じた。仕事の内容がバレた時に最も理解を示したのがやはり母親の立場にある者(嫁)だったことには嬉しいような安堵感を覚えた。

設定が設定なので観る人を選ぶかもしれません。が、私はマギーの勇気に拍手を送りたい。
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