やわらかい手の作品情報・感想・評価

『やわらかい手』に投稿された感想・評価

ちょっと変わった作品を見たいと思い今作を。
正直期待はしていなかったが、予想以上素晴らしく最後は感動さえも。

大病患う孫の治療費を稼ぐため、風俗の世界に飛び込んだ初老の女性マギーの物語。
ただポルノ的な要素は皆無に近く、家族の愛を描いたハートフルなストーリー。

愛する者のために自分を犠牲にする精神や、お金を稼ぐことの難しさ、誇りをもった生き方など、道徳的な要素が強い。

それだけにマザコン息子や品のない友人などイライラさせられる人物も多いが、途中から見せるマギーの真っ直ぐな姿勢が非常にかっこいい。

世間体ばかり気にするのではなく、自分の信じた生き方をする大切さを改めて認識させられる良作であった。
幼い孫を助けたい一心で飛び込んだ未知の世界で新たな人生を見つける初老の女性を演じるハートフル・ドラマ。 
難病に苦しんでる子供にとっては時間というのはとても大切で貴重なもの。そのタイムリミットが迫ってきたのに、何も出来ない親の立場って想像を絶するぐらい苦しいでしょうね。そんな孫の状況を見ていたマギーは、高給を得るために風俗の世界へと足を踏み入れます。
もし自分の子供がこういう状況におかれてたら、自分の命にかえてでも助けてやりたいって思うのが親ですよね。マギーの孫を助けたいって思いで風俗で働く気持ちも理解出来ました。
でも難病の息子と、風俗で働く母親との間に挟まれてたトムは複雑やったと思います。心の中では孫のためにそこまでしてくれた母親の行動に感謝しつつも、風俗という部分が引っかかって素直に感謝出来ないんですよね。トムの気持ちは理解できるので本当に難しい部分ですよね。

マギーが働く風俗店も淡々と仕事をこなしてるような雰囲気があって、いやらしくなかったのが良かった。この風俗店での人間模様が面白くてホロ苦い中にもユーモアが散りばめられてました。

テーマがテーマだけに好き嫌いが分かれる映画になると思うけど、ラストも良かったし個人的には好きな映画になりました。
これは凄い作品!ストーリーも役者も。
また観たいが配信サービスにないんだよね。
tulpen

tulpenの感想・評価

4.5
芸名はイリーナ・パーム(←これが原題)その仕事とは…壁越しに手で男をイかせること。
お金のためとはいえ覚悟を決めて
いざ仕事を始めてみると意外にもマギーはゴッドハンドの持ち主だった!

この映画の全体のテンポ、
ムードが凄くいい。
一つ一つの台詞に無駄がなくて
品のある演出に最初の下心なんか吹っとび大人のラブストーリーに酔えます。
クストリッツァの作品には欠かせないミキ・マイノロヴィッチがマギーとの絡みではため息が出るほどのセクシーさをみせてくれます。

マギーを演じるマリアンヌ・フェイスフルがとてもチャーミング。
昔、ミック・ジャガーの恋人だった頃の可愛らしさをほんのり残しながらこの役を演るのだから驚いちゃうよ。


静岡シネギャラリーにて。
2008.2/3 (6) 通算1061
しゅり

しゅりの感想・評価

3.6
悲劇6、喜劇4くらいの割合なのかな このバランスがめちゃくちゃ良かった
息子が本当にどうしようもないクソバカガキすぎて腹立ったな 精神状態に余裕がないのはわかるけど人としてダメすぎるでしょと思った
支配人とイリーナが言葉を交わさず視線だけでお互いをわかり合ってる感じがとても良い きゅんとする
ああいうタイプの風俗店って今も東京にあんのかな
マリアンヌ・フェイスフルは演技上手くないけど、彼女自身が生きてきた道を武器にマギーの好演を見せていると思う。彼女の持つ不器用さが年齢や役柄にとてもマッチしていると思う。彼女以外にはちょっと考えられない。
音楽はマリアンヌの昔出ていた頃の映画の感じで使われているのか、サイケデリックみたいな古風な感じが良い。重ねて重ねて重ねて…という使い方がクセになる。

悲喜劇の超成功例だと思う。孫の病というスタンダードな苦境に、性風俗の中で見える人間の愚かさや存在の小ささ、くだらなさが重なりその混ぜこぜでこそ人生は美しいと思わせてくれる。
風変わりな性風俗という絶妙な匙加減のセンセーショナルさがいい。孫の為に体を売る話はやっぱり見たくないし、手がすべすべというわけのわからない利点が生きているのがこの映画の、そして人生のなんというか苦笑いのような部分だと思う。

構図とかに特に光るものは感じなかったけど、イギリス映画らしい感じの良さがある。真横からの水平なカットが多いのかなと思う。わかりやすい。手を洗うシーンなんかもそうだけど、いい塩梅の悲壮感を出すのが上手い。

先輩役の女性や支配人良かった。先輩と酒飲むシーン良い。あの人がいないと映画の心地良さは出なかったと思う。

支配人に向かってあっかんべーをした理由は給料が言い値と違うことからの反骨心で「弁当持参でやらしてもらいますよ!辞めませんからね私は!」ってことだと思うけど、絶望から立ち上がるやる気や生きる気力が復活してきたってことなのかな。孫がいよいよやばいのに唯一の働きどころであっかんべーを⁉︎辞めさせられたらどうすんの⁉︎という気持ちがややあった。
そして焼石に水の額とはいえ、お金が必要な時に車のオモチャ買っちゃダメだろとも思ったが、こういうやや考えなしな部分含めてマギーであって、嫁はそこにもイラついてると考えるととてもよくできている。

ペ◯ス肘、とても良い。痛みや人生にはユーモアがないと。左手に変えた時の薬指のリングの演出も良かった。

中盤以降は演出や展開にキレが増す。
低所得というのをしみったれたものでなく、当たり前の隣に座る人として描いているのが良い。
青年にタバコもらうの劇画みたいで良かった。

支配人との雪解けのシーン、あっさりしていて良かった。大人同士なんとなく通じ合っていた、ぐらいで全然いい。説明うだうだされたりしたらやだなーと思ったけど、支配人の笑顔が全てを物語っていて良かった。

息子の無理解は凄くバランスが良い。マザコン気味にも描かれていて、自立を促した面もあるのだろう。ある種の子離れと自分の人生を取り戻しエンディング。ラストの音楽の入り良かった。

孫かわいい。

このレビューはネタバレを含みます

過去鑑賞
風俗(手○キ)も立派なお仕事。
どの仕事でもお金を貯めようと努力する姿には感動する。だから努力を批判するな。
他にも能力主義(稼げない人は切っていくスタイル)によるトラブルなどのシーンがあり、非常にリアル。

マギーの明らかに隠しているような態度(世間体を気にする人の心理状態)が疑われる原因なんだろうし、マギーの秘密事に対し必要以上に執着するのもやり過ぎている。売春婦って罵るのは論外(あまりにも酷すぎるし、諦める感じで何かしらの成果をだしていない息子が罵るのは人として最悪。)。
とにかく人間関係について色々と考えさせられるし、罵る人が存在していると同時に世間体を気にする人が存在するということを学んだ。

また支配人がスーパーマリオブラザーズをやっているのなんか好感持てる。
あとマギーが店の壁に釘を打っているところはさすがに良くないと思う。
孫の病気の治療費捻出のため、抜き屋で働く決心をする。しかし隠していた息子に跡をつけられ娼婦呼ばわりされるも嫁には感謝される。ひたすら鳴っているギターの音が印象的。
マリアンヌ・フェイスフル、懐かしい名前の響き、あの革ジャンタイトジャンプスーツに裸身を包みハーレーダビッドソンに跨って疾走していた『あの胸にもういちど』の女神とこんな所で再会するとは…。すっかりお婆ちゃんになったけど、目元あたりは面影消えていないなあ。そんな女神が難病の孫の渡航手術費を稼ぐために風俗店の手コキ風俗嬢になるという驚き設定、しかもその柔らかい手が評判呼んでゴッドハンドになっていく。新宿歌舞伎町からヒントを得たと店の経営者ミキが宣うた通り、歌舞伎町にこの手の店バブルの頃あったなあ(覗き部屋もあったなあ)と別の感慨も⁈ 息子夫婦にもバレ、お茶仲間から冷笑されても愛する孫の為なら何を言われても命も惜しくないこの無償の天使ぶりに涙ホロホロです。店の経営者ミキとの淡い信頼関係、お高いお茶仲間に痛烈なしっぺ返し、息子夫婦と孫を無事渡航に旅立たせ安堵の表情で店に戻るマリアンヌオババ女神に幸あれです。
邦題がいい。この映画で「やわらかい手」は直球の下ネタなのに、ハートフルな印象でミスリードしてる感じが面白い。中盤まではマリアンヌ・フェイスフルのお婆ちゃんっぽさが、いくらなんでもナシだよなーって思ってたが、終盤頃には、アリなように思えてくるから不思議。女性の風俗堕ちの物語は、悲劇的な結末に至るものと相場が決まってるんだけど(溝口の時代からの伝統だ)この映画の楽天性はかなり珍しい。夜の商売を否定的に描かないで、困った時のセーフティーネットとして機能してるよね、とあるがままに捉えている。

ハンドジョブの仕事始めたはいいが、上手な嘘がつけず、周囲にバレて、息子に怒られ、友人に絶縁される、など一応悲劇的な展開にはなってる。でもさして葛藤するでもなく、大金を稼ぎ、ちゃっかり恋人までゲットする。不器用なんだかしたたかなんだかよく分からない人だけど、孫を助けるって目的はちゃんと達成してるし、このオバサンは強い。オバサンと一緒に映画も飄々と悲劇を乗り越えていく。大きな目標を叶えるためには、何かを犠牲にすることもあるだろうが、決して気に病むことはない、というポジティビティが清々しい。手だけじゃなく心がやわらかいってことなんだろう。
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