しちみ

少年と自転車のしちみのレビュー・感想・評価

少年と自転車(2011年製作の映画)
4.2
ずっと見たかったし、ちょうど良い長さだったので真夜中に一人で鑑賞。

初めからウルウル状態で見続けて最終的には号泣しました。
電話のシーンから唐突に始まるのは珍しく感じました。
初めから焦っているシリルから始まる。
初め彼には自転車がなく、父親プラス自転車を探し求めていた。
兎にも角にも全力で走って登って走ってからスタート。

そしてそこで悲しき現実を目の当たりにして事実を受け入れられなく、帰るのを拒むために女の人にしがみつく。
そう、この人がとってもとっても親切なサマンサ。
まさかこの人が里親になろうとはシリルにしがみつかれた段階では思いもよらなかった(笑)

全体を通して悲しいお話でした。
自転車をゲットしてからは彼の後ろから映像が流れ、父親に見捨てられてからは真横から。真横だと前後が何も見えない。まさにシリルの状態とリンクする。後に悪ガキと出会ってからは前からのアングルに変わる。前は見えないが後ろがよく見える。

そして最後の最後は彼が自転車に乗り去っていくシーンを追わないで終わる。
これはシリルが一人で歩みだした と捉えるべきかはたまた、一人で先に進んでしまった…。と捉えるべきなのか。
個々の自由だと思いますが個人的にラストの自転車を漕ぐシーンはシリルが悲しき人生に一人で向かっていくように見えました。とりあえず新聞屋の親子大っ嫌いです。

全体を通して話の展開が早くポイポイ進んでいくのでとても見やすい。それに対してこういうハートフルな作品は人の感情、出会いなどをキッチリ描かないと感情移入出来ないこともある。
今回はシリル役の子とサマンサ役の人の演技がかなり惹き付けてくれたのでわたし的には満足です。

シリル役の子は本当に演技が上手かった。どちらかといえば演技をしているうちに自分の世界とリンクしているような感じ。苦しみや葛藤などがリアルに伝わってくる。
サマンサとシリルがあそこまでの仲になるのをじっくり描いてくれたらかなり良い作品だと思う。もう30分伸ばして深く撮れば良かったのにとも思う。

個人的にラストシーンが衝撃すぎてずっと泣いていたので他のことを書くのが大変です^^;
家族の繋がりは血だけではない、これがなによりも分かる映画。
今のこの世界発信すべき映画だと思う。
全編吹き替えなしなので自国語(メルシーって何語や?)で字幕のみの鑑賞でしたがこれはこれでよかった!

悪事を働いて父親のところに行き、最後にサマンサのところに戻って自分から謝り一緒にいたいと告げたシリルを見たとき涙が止まらなかった。
自分は親でもないし、まだ養ってもらっている側の人間だけどこれが成長なのかと痛感。

タイトルの少年と自転車は当たり障りないように見えて複雑なタイトルだと思う。
少年なんて腐るほどいるし、自転車も腐るほどある。
そんな中でこの映画はシリルとシリルの自転車(父親との思い出の品)を題材に撮っている。
これが幸せな恵まれた子と自転車の話ならこんなタイトルじゃないと思う。
1から10まで知ってくれている親がいないから当たり障りのないタイトルなのかな…とまで憶測が行くぐらい悲しいよ、これ。

親が生きているうちに一回。
親になってから一回。

人生で2回見てほしい作品。
よく育てられないなら産むな!って言うけどね、ガキは放っておいても育つ。
でもね愛してあげられないなら産むな。
いつか親になる時に思い出す作品でありたい。

賛否両論ありそうな作品ですが個人的には残る作品。
しちみ

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