ともたろう

バビロンの陽光のともたろうのレビュー・感想・評価

バビロンの陽光(2010年製作の映画)
4.0
フセイン政権崩壊から3週間後、砂漠の中を老女と少年が歩いていた。
湾岸戦争で行方不明になった息子を探す旅。少年は父の顔をまだ知らない。

冒頭のヒッチハイクで車に乗せてくれた男のセリフが印象的だった。
「サダムが糞なら、アメリカは豚だ」
フセインはいなくなったが、銃声と火の手は止まない。途中立ち寄るバグダッドは廃墟同然。
神に祈る老女に、「そんな事をしても時間の無駄だ」と言い放つ。

この老女と少年はクルド人。言葉はあまり通じない。少年は僅かにアラビア語を解す。
音楽はあまり使われず、台詞も抑えめ。
美しい構図と対象的にイラクの悲惨な状況が映し出される。
父親は見つかるのか。
この国では、過去数十年間に身元不明の死者は100万人を超えるという。
老女にとっても、監督にとっても実体験が元になっている。

これは観ておいてほしい。
huluにて鑑賞。

原題は「SON OF BABYLON」。sonとsunを掛けたわけだけど、監督のバビロンに込めた思いに通じると思う。
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