映画おじいさん

銀心中の映画おじいさんのレビュー・感想・評価

銀心中(1956年製作の映画)
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戦争と床屋だけに『私は貝になりたい』(1959年)みたいな話かなと思ったけど、新藤兼人がそうするはずがない。メロドラマにのっとった変化球というか違ったアプローチの、らしい反戦映画でした。

苦境を助け合う美しい恋愛が、生きた英霊の登場によって禁じられた恋愛に一転。喜びの代わりに地獄に落とされる乙羽信子と長門裕之。ただ堪えるのみの宇野重吉(英霊)が不憫。

いかにも新藤兼人な物語はベタというか予想通りな展開でなんともない…。一言で本作を表すなら乙羽信子のショウケースでしょう。というか、それだけの作品。悪く言えばオレの彼女プロモ映画。

妻の顔、叔母さんの顔、不幸でやさぐれてしまった顔、女の顔から、二役でスレっからし田舎芸者の顔までも披露。乙羽信子は割と好きな女優さんだけど正直疲れる。次々と顔を変えすぎ。
長門裕之との初対面では叔母さんの顔で、宇野重吉の出征あと二人になったらすぐ女の顔とか、ちょっと気持ちがついていけない。

始めの旅館で剃刀も持って棒立ち、長門裕之との初対面ですぐに剃刀みせてと言ったり、乙羽信子と剃刀というのをもっと活かして欲しかった。
夫の戦死を聞いてやさぐれて疎開した先で、顔に剃刀をあてて上下に動かしながらボーゼンとした表情をしているところとか最高だったのに。

* 助監督が中平康
*読みは、しろがねしんじゅう

(以下、激しくネタバレ)


本作の最重要部分は、独りで死んだことに対する解釈だと思うんですが、私には難し過ぎました。よって楽しめませんでした。修業して出直します。。