ああも正面から人を映されたり、同じ地点からずっと眺めさせられたりすると、下手にカメラが動くよりかえって心情がひしひし伝わるものだと感じた。
今作では、戦後社会における伝統的家族観の瓦解が一つのテーマらしい。家族が物理的にも心理的にもバラバラになって、戦後の新たな価値観の中に生きる息子達は親に愛情がないようにも見える。しかしそれが今作におけるスタンダードで、むしろ義理の親を気遣い続ける原節子の方が異端。
どちらの世代が悪いとかは一概に言えないが、当時家族が緩やかに崩壊していく様を見た父や母、祖父母達の世代は、とても寂しかっただろうなと思う。
2021.11本目