dieBananaSuki

魔 デビルズ・オーメンのdieBananaSukiのネタバレレビュー・内容・結末

魔 デビルズ・オーメン(1983年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

身体を梵字が駆け巡るアフェクトがばちくそかっこよくてめちゃくちゃ印象に残る。あそこだけで本作を観た価値があるといっても過言ではない。
いかにも怪しげなインチキおじさん黒魔術師との戦いのすさまじさよ。黒魔術師が狂ったような痙攣した動きで術を繰り出し、蝙蝠を飛ばしたら僧侶が印を結んで燃やして、鰐の骨が動いたらそれを追い祓って、なんかよくわからない頭部だけのモンスターを爆発四散させるあの異様な戦いは癖になる。これが一回目の戦いで狂乱と表現する他ないシーンだ。最後にもう一回戦いがあって、そっちは見た目的な派手さがマシマシで割と面白い。主人公が紅白の時の小林幸子みたいなゴテゴテな装いの僧侶と化して、バジュラを飛ばして敵の出したモンスターをまたもや爆破する。なんなんだこれは。世界観とイマジネーションがほとばしる怪作だ。
黒魔術のシーンの汚さについても言及しよう。なんといっても、見た目が汚くてドロドロしたものを口に入れて咀嚼したものを吐き出して次の術師に渡して、また咀嚼して吐き出して、の最悪なリレーは嫌でも記憶に残る。こんな調子でずっと物理的にドロドロしたもの(血とかゲロとか内臓とか)が出てきて、やけに汚い。オカルト的なものには疎いのだが、左道(黒魔術とか邪教とか)の儀式ってこういうものなんだろうなと思ったりした。
ただ、前半のテンションを最後まで維持しきれていないため、盛り上がりに欠ける印象が強いのも事実。一回目の戦いがあまりにもよすぎたため、二回目はそのハードルを越えるものには思えず(これは、一回目の戦いで了解した以上のものが出てこなかったことで慣れから凡庸に感じられたことと妙にこじんまりとしていることが原因かも)、確かにすごい映画だけど、こちらの求める満足感を満たすような、圧倒的な力でねじ伏せるようなすさまじさを感じることがかなわなかった。ここだけは残念だったかな。個人的にはファントムオブパラダイスのラスト(結婚式のくだり、あれは痺れた)のようなどんちゃん騒ぎ感のある展開がもう一つがあれば完璧だった。
でも、この圧倒的な世界観・イマジネーションとほかのオカルトものの作品では並び立つもののない汚さ、寺院の荘厳さ、ハッとするような美しいショット、サスペリアのような原色バキバキのライティングが混在するカオスな状況は本作でしか観れないものであることは間違いない。