スコット

8 Mileのスコットのネタバレレビュー・内容・結末

8 Mile(2002年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

高校時代の上級生に精神的にも肉体的にも毒され、働きもしない飲んだくれの母親とは言い争いが絶えず、巡り会えた恋人はモデルになるためなら誰とでも寝るような女で、親しくしていた友人とも喧嘩で疎遠になり、住居の立ち退きによって家を出ざるを得ない状況になり、彼女と寝た男を殴りに行けば、その男のグループからリンチを受けるなど、これ以上無いほどの不幸が主人公を襲う。

そんな状態で迎えるラップバトル。エミネムの『もう何も失う物は無い』という絶妙な表情で、自らの味わった苦しみをラップにして一気に吐き出すシーンは圧巻。絶望の淵にいる人間が実力だけで他を圧倒するという非常に好みなタイプの作品なので、これはかなりの傑作か…?と中盤までは思った。

しかしラスト10分でこの映画に対する評価は少なからず変わった。

ラストのラップバトルが終わった後、鑑賞しに来ていたクズの彼女との一瞬の”和やかな”意思疎通があったり、救いようのない母親もビンゴで運良く3200ドルを稼いだことで今まで通りの生活を取り戻し、取って付けたような優しさを見せていたりと、主人公に対してむごい仕打ちをしてきた彼女・母親との関係に清算がついておらず、そこはかなり中途半端だなと感じる。あの流れなら母親とは決別し、幼い妹と共に別の場所で生きていくのが良かったと思うし(ラストに妹を登場させなかったのも残念だった)、彼女についてはもはやNY行きを告げるシーン以後は登場させないほうが良かったように思える。

中盤までは90点くらいの出来だったのに、終盤で一気に残念な点が目立ったのが実に惜しい。
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