ジュン68

コールガールのジュン68のネタバレレビュー・内容・結末

コールガール(1971年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

(ネタバレかつ、独断と偏見で書きたい放題の部分あり)

 マイブーム「娼婦映画探訪」3本目。
 TSUTAYAでサスペンスの棚にあったけれど、これはラブストーリーですよね。なので、娼婦が客の男(あるいは、客ではなくても女が娼婦だと知ってる男)と恋愛関係になる映画とかけまして、「ハレとケ」とときます。その心は、ハレを「プリティ・ウーマン」だとすれば、ケはこの作品って感じでした。
 ハレとケの違いを分かりやすくいうと、こういう例えを考えました。両作の登場人物をすべて日本人にし、舞台を今現在の東京にしたものを漫画にすると仮定します。その際に、誰に描いて欲しいか? ここからが独断と偏見なのですが、「プリティ・ウーマン」は一条ゆかりさんが思い浮かぶ。最近人気の漫画家さんだと、東村アキコさんとか西炯子さんも。(全然違うって?まあ、その話は本筋とはそれるので、ちょっとあっちに置いておくとして。) 一方、こちらの「コールガール」は、真っ先に真鍋昌平さんの絵が思い浮かぶ。つまり、それほどの違い。
 本作の印象に残ったシーンは2つあります。
 1つ目は、真相究明のために派遣された男クルートと、彼に心を許し始めた娼婦のブリーが、二人連れだって買い物をするシーン。ちょっと前を歩くクルートの上着の裾を、ブリーが掴んで着いていくところが何とも切ない。やがて二人の影が近づいてひとつになる。いいねえ。愛だねえ。
 2つ目は、ラストシーン近く、追い詰められた男ケーブルが、ブリーに事の真相を話したあと、ブリーへの、というよりコールガールへの憎悪を吐き出すところ。彼のセリフがすごい。

 君らのやり方だ
 男をその気にさせて安心させる
 お遊びでしかないんだ
 怠惰で曲がってて
 まともに生きられないから
 人の性的幻想を食い物にする
 こう聞いても驚かないだろう
 だれもが心の隅に抱えてるんだ-
 後ろ暗いものを
 あからさまにすべきじゃない-
 病気や弱点を
 君らはそれを商売にしてる
 男の弱みをな
 自分の弱みを知らなかった
 君に教えられるまで

「人の性的幻想を食い物にする」とか「男の弱みを商売にしている」とかって、そんな言葉で遊女を詰めるなんてアータ、どんだけ素直で弱い人なんですか。あのねえお客さん、そんなこと言うヤツァ、そもそもそういう遊びしちゃいかんのよ。
 いや、しかし。この切羽詰まった男のセリフは、他の娼婦ものを観るときに、客の男の心情を追っていくときの、ひとつの鍵になる言葉であると思う。このセリフを言ってるときのケーブルは「SHAME」のセックス依存症の主人公に重なったし、「ガールフレンド・エクスペリエンス」に出てきた、寂しそうな後ろ姿の男にも重なった。あと「アメリカン・サイコ」の主人公にも。
 でも、いろいろあって、最後にクルートとブリーが一緒に荷物まとめてニューヨークから出て行くところはホッとするし、希望を感じる。
 都会で出口の見えない生活を送っていた孤独な女の前に、実直な男が現れて、何もいいことが無かった街から女を連れ出すのだから、これもシンデレラストーリーじゃないですかね、ケのほうの。
 映像も暗がりの使い方がカッコよく、名作。

2015/8/18 DVDにて鑑賞