Junko

大阪の宿のJunkoのレビュー・感想・評価

大阪の宿(1954年製作の映画)
4.7
東京から大阪へ左遷され、住む所を探していた主人公が舞台となる宿「酔月荘」で暮らす事になり…という所から話が始まる。

宿で働く人々や住人、芸者のうわばみやお針子のどうにもいかない生活がとても丁寧に描かれている。
小道具の使い方、映し方、演技があまりにも凄く映画として感動した分、
救われないどうしようもない、どうにか生きていくしかない状況に悲しくなってしまった。

佐野周二演じる三田はんは、親身になってはくれるが何処か他人事な様子があった。
乙羽信子演じる、芸者うわばみが
「三田はんって星みたいなもんかもしれん」と言う。
この台詞はかなり深い意味があると思う。
星は天高くキラキラ光っている、照らしてくれるとも捉えられるし
届かず見ているだけとも捉えられる。

三田はんが一歩下がる事により、主人公の周りの人物の苦しさ生きずらさ
時代の変化等がズシッと観る側に突き刺さるのでなかなか捉え所があるようで無い主人公で良かったのか?なと…。
(原作を読まないと分からない部分が多いのと、主人公の受け取り方が人によりけりだなぁと。原作は大正時代らしいので、大分違いがありそう。)

見所が沢山ある映画であった。
女優陣の演技は素晴らしく、間を読ませるシーンやカットも素晴らしい。
戦後から9年程経た、大阪の街並みも見られる。

ひよこ、すき焼き、割れた酔月の猪口、牛の絵、顕微鏡…。

戦後の日本と現代の日本。
時代は変わった、豊かになった。
しかし、根本はどうなのだろうか…。
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