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鞍馬天狗 恐怖時代のkuronoriのレビュー・感想・評価

鞍馬天狗 恐怖時代(1928年製作の映画)
2.5
アラカンの鞍馬天狗です。

…終わったと思ったでしょ(笑)。
このDVD(「鞍馬天狗 前後編」と本作の2作が一枚になっている)を前から持ってたので、どうせならレビュー書いとかんと思いまして(笑)。

さて本作はサイレント版。最初期の鞍馬天狗です。第一次の嵐寛寿郎プロダクション時代の作品。40作あるアラカンの鞍馬天狗の前から5本目の作品です。

いきなり杉作達の子供の喧嘩から始まります。
そして、薩摩屋敷で西郷どんが、志士の名を騙って町家に狼藉を働く輩がいるので調べろと下知するシーンがあって、私がやりましょうと倉田さんが出てくるわけです。
女スリとのやり取りと、偽天狗と隼の長七との絡みがあって、化け物屋敷に潜入する天狗。
そこから偽天狗一味とのスラップスティックな争いが始まり、屋外へ。川と橋を使った、体を張ったコミカルシーンがあって、これが収束したところで「終」。
弁士は「鞍馬天狗は永遠に続きます」的な解説を入れて話を締めます。

私は最初このDVDを観たとき、「へぇ、いいところで『後に続く』になっちゃうんだ。なるほど、当時の鞍馬天狗ってこういう終わり方なんだな。」と思っていました。
…違います(笑)。
こっから先は遺失しているんですね。
それを、映画としてぶつ切りで終わったと思わせないように、ああいった説明をしているのだと思います。

資料にさせて頂いている本に、公開当時の宣伝文句が載ってますが、それによると…。
化け物屋敷の騒動の後、新選組が酒宴を催すのに怒った天狗が敵の酒席にのりこんで、近藤勇に「民の窮乏をよそにそれでいいのか切腹して詫びろ」と詰め寄るシーンがあったようです。
近藤が黙考するところへ、桂小五郎をはじめとする志士たちが(多分)天狗を救おうと斬り込んで来る。今にも大立ち回りが始まろうとするところで「待て!」と大喝一声近藤は叫んだ!!…とあります。
こんなシーンは全くありません。
そもそも新選組が出てきません。

おそらく、その宣伝文句のシーンがあった後、普段は敵味方の新選組と志士たちが一丸となって、偽天狗一味にあたるという筋書きになっているのではないかと愚考するのですが、確証がありません。
もしそうだとすると、現存してるのは、ほんの始めの出だしのあたりだけということになります。
うーん。

さて、
本作の、女スリとの絡みのあたり、天狗の刀が上下逆に、刃を下にして腰に差されているシーンがあります。
明らかに変で、コリャ駄目だろうと思うのですが、本作は第一次寛プロ終わり間際の作品で、多分取り直しするフィルム代が無かったのだろうなどと、勝手な妄想を膨らませて無理矢理納得しております。
ホントはどうなのかね?
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