1989年公開映画なのにモノクロ映画。
原爆のキノコ雲、黒い雨が白黒映像によってよりリアルに、また印象深く強調されていた。
今まで様々な戦争に関する映画を見てきたが、人々が焼けて黒焦げに転がっているシーンはとても悲惨でどの映画よりも無惨な写り方に見えた。
矢須子にだんだんと迫り来る原爆症の恐怖。周りの知人が死に、隠れてアロエを食べて我慢していた病気も悪化し、髪の毛が抜け落ちる。その恐怖の時間の経過が鯉の成長と対比して表されているのが面白い。
モノクロだからなのか、役者の演技の凄さもあるのだろうけど、今の役者と違うのは演技をしているように感じられないこと。セリフの間合い、声のトーン、視線、全てが本気なものに感じられる。特に叔母のシゲ子が死んだ知人達の幻覚を見たシーン、悠一がエンジン音に怯えてフラッシュバックするシーン、矢須子の髪が抜け落ちたシーンはカメラの前で演技をしているものだとは思えないリアルさがあった。