黒い雨の作品情報・感想・評価

「黒い雨」に投稿された感想・評価

ジョウ

ジョウの感想・評価

4.5
凄い映画です。
冒頭の原爆の凄惨なシーンは本当に恐怖を感じる映像です。
放射能の後遺症、それに起因する差別とともに生きざるを経ない人々の苦しみや苦労が嫌というほど伝わります。
演出面でも面白い工夫がいくつもありました。
特に悠一が自身の病について矢須子に説明するシーンでは舞台風なライティングと演出がなされます。
終盤での矢須子の半狂乱のシーンも、絶望感の中に儚い美しさも映像から感じます。
原爆投下後に降った雨。
矢須子はその雨を浴びてしまう。
叔父夫婦に引き取られ、縁談があるが、原爆症を警戒されてなかなか決まらない。
原爆の直接被害を受けた夫婦よりも2次被害の人々が先立っていく。
そして、ついに矢須子にも…。

井伏鱒二原作の映画化。
モノクロで昭和映画に見えるが、平成に改元後の作品。
偶然か、同年にアメリカでも「ブラックレイン」と題した映画(リドリー・スコット監督)が公開されているが全くの別物。
市原悦子の演技がオーバーで日本昔話を思い出すのが玉に瑕。
主演の田中好子が好演して見ごたえはある。
創

創の感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

この世界の片隅に の、すずさん、リンさん、すみちゃん
父と暮らせば の、美津江
原爆の子 の、孝子
黒い雨 の、矢須子

1945年、二十歳前後だった女性たち。

原爆の映画に若い女性の主人公が多いのは、やはり悲劇や不条理が伝わりやすいからなんだろうか。

投下から5年後、年頃になり、良縁を求めても、あの時広島に居たらしいという理由でうまくまとまらない。
広島には居たけど、直接被曝はしてないんです!!良かれと思って養父が当日の行動を思い起こす。
外出先から戻る途中、瀬戸内海の海で放射性物質をたっぷり含んだ黒い雨を浴びている。
養父母である叔父夫婦を探して広島市内に入り被爆直後の惨状を目にしながら避難した。

投下直後に広島市内に居なかっただけで、めちゃくちゃど真ん中の被爆者。
放射能、放射性物質、黒い雨、市中被曝、いろんな知識を得た我々にはそう見える。
でもおじさんは一生懸命縁談をまとめようとする。
そこに感じる悲しさは後世から観る驕りだろうか。

白黒映画なのだけど、田中好子も日本昔ばなしコンビも声ですぐに分かるせいか、
むかーしの映画的な印象は薄く、それよりはあえて白黒で作った意図を強く感じる。
被曝直後の広島で避難途中の一家が目にする惨状も、白黒だからこそ、
そのくっきりとした輪郭線にいろんな感情が湧き上がる。

呑気な石丸謙二郎がなんだか気恥ずかしくてとっても良い。
気付いた時には既に世界の車窓からのイメージで固まってたせいですごいおじさんだと思ってたけど、
石丸謙二郎だって最初からおじさんじゃ無かったんだよな。こういう若者を演じる時だってあったんだよな。でも最初から良い声してるなぁ。と思う。

被爆直後の悲惨さと同じぐらい、被爆者差別やPTSDや、いつ発症するか分からない先の見えないピカの恐怖が描かれていて、
描写として決して被爆直後の所謂怖い描写は多くは無いのだけど、映画全体に漂う5年経っても消えないどころか濃くなる原爆の恐怖で夜眠れなくなる。

やっちゃんはなんだかんだお嬢なので、原爆が無ければ良いところへお嫁に行き、当時の女性としてかなり理想的な良い奥さんお母さんお婆ちゃんになっただろう。
そしたら自分の子どもを持てなかった閑間夫妻もきっと幸せに孫に囲まれて穏やかな死を迎えただろう。
田中好子の美しさと可憐さにはその説得力があるし、北村和夫と市原悦子は良いおじいちゃんおばあちゃんを想像させるだけの味がある。

お風呂で抜けた頭髪を手に薄ら微笑みを浮かべる田中好子の横顔は美しくて恐ろしくていつも鼻の奥が痛くなる。


カラーの後日談も辛い。
あぁ生きてたんだ!虹は出たんだ!
と思ったのも束の間、生きていて良かったんだけど、良かったんだけど良かったんだか分からない。
お遍路の旅に出てボロボロになっても口紅だけは手放さなくて、愛する人の元へ戻る事だってできたはずなのにそれは選べなくて。
もしかしたら本当にそうかもしれないけど違うかもしれないあの日の幻影をおじいさんに見る。
どうしてこうなってしまうのか、どうして布団の上の死を選ばなかったのかと思うけど、
あの日死んでいった人と自分の違いが分からなくて幸せになるのが自分だけ愛されて穏やかに死ぬのが怖いんだよね。

薄汚れて口紅だけが浮いた田中好子の姿が本当に辛い。

あえての白黒、あえてのカラー。
基本は2つしかないこの選択肢からあえてどちらを選ぶかの重要性はこの映画に教えてもらった気がする。
🚧👷🏻‍♀️鑑賞記録ONLY👷🏻‍♂️🚧

過去鑑賞。゚゚(´□`。)°゚。
mikan

mikanの感想・評価

3.8
辛すぎる…。原作は井伏鱒二の同名小説。
8月6日、原爆から辛くも生き残った男と妻、姪のその後を描く。
白黒の映像に雨や水の黒がショッキング…水中で生きる魚や実る稲穂が象徴的に映し出される。
描き出される非情で死に溢れた内容と自然の美しい雄大さが対極的で余計……。
最後の台詞でこの映画が「白黒」な理由がわかった気がする。
監督 : 今村昌平、原作 : 井伏鱒二による原子爆弾の恐怖を描いた作品。

広島に原子爆弾が落ちる前の他愛もない人々の日常の生活を作品にした、
「この世界の片隅に (2016)」

広島に原子爆弾が落とされた地獄絵図を作品にした、
「ひろしま (1953)」

広島に原子爆弾が落とされた後のニ次被害、後遺症、偏見、差別を作品にした、
「黒い雨 (1989)」

私にとって原爆投下の前後を描いた3部作と言える。

原爆の爆風で建物が崩壊シーンやら瓦礫とかした広島市の街並み、そこら中に横たわる怪我人やご遺体、これらのシーンに関しては「ひろしま」の作品にもあるが「黒い雨」の作品の方がまだ柔らかい描写(表現)になっている。白黒映像だがかなりの衝撃がある。

主人公の高丸矢須子(田中好子)が叔父で育ての親である重松夫婦の自宅に瀬戸内海から市内に戻る途中、空から降ってきた黒い雨に船の上で打たれるシーンは、コールタールでも浴びているかのようなくっきりとしたクリアな黒で表現されていて、このあと起こる悲劇を助長するかの様な演出で身震いする。

原爆の二次被爆者へのいわれなき差別と偏見の描写もこの作品は包み隠さず表現している。矢須子は知人から縁談を持ち掛けられるが、二次被爆によるピカが伝染る(健康被害)を理由に相手側に断られたり、伝染るからあっち行けと差別を受けたり、この手の他の作品にはない試みを見せている。
※漫画「はだしのゲン」にはそう言った表現は多数あります。映画作品としては無い試みだと言う意味です。

この作品で最も強烈なシーンは、お風呂場で髪を洗っている際に矢須子の体に異変が起こり、毛髪がごっそり抜け手にびっしりと髪が絡みついている…あの映像は当時見ていた私の心臓が「雑巾を絞るかの様にぎゅーーー」となったのを今でも覚えている。

周りの知り合いが二次被爆で死んでゆく中、矢須子は元気を失い発症への不安を抱えやがて精神が壊れ発狂する様は…死ぬのも地獄…生きるも地獄…だと言うこの作品のテーマとなっている。

体調を崩した矢須子を病院までトラックで運ばれるとき、叔父の閑間重松(北村和夫)が姪の病気が治ることを祈りながら見送るシーンは号泣。

「あの子の元に虹(奇跡)が出ます様に」と祈るシーンは世界平和を祈っている様にも見えてならない。

私も、他の国にも核兵器の恐ろしさが理解され核兵器廃絶となる日が来ることを一日も早く祈っている。

①鑑賞年齢10代
②心に余裕鑑賞あり
③思い出補正あり
④記憶明確
sobayu

sobayuの感想・評価

5.0
こうの史代の夕凪の街 桜の国を思い出しながら見た。同じ題材で白黒だから「ひろしま」と同じくらいに作られた映画のように錯覚しちゃったけど1989年公開。爆心地の特撮、作り込みの精巧さで時代を感じる。

基本的には戦後、田舎で暮らす一家の話で、近所の人たちも親切で良い人ばかり。だからこそ原爆の後遺症が恐ろしい。皆あっさり苦しみぬいて死んでいく。皆突然気が触れたように錯乱するのは、辛い記憶といつ発症するか分からない恐怖を必死に押し隠して生きているからなんだろうな。

虹が出たら、と最後に伯父が祈るけど、白黒映画に色は表れないまま終わる。

そして未公開だったという20年後にお遍路に行く矢須子の後日談。ここでやっとカラーになる。あぁ生きていたんだ…と明るい気持ちで見始めたら、本編よりガツンときたかも知れない。現代に矢須子が居ることで、あれは遠い昔の話じゃないぞって突きつけられる。矢須子が全て捨ててボロボロの身なりになっても口紅を塗ることを、業のように言ってたのが忘れられない。ずっとリアルに描いていたのに、ある瞬間で人がぱっと消える描写も忘れられない。忘れられない映画になった。
原爆が投下された広島のその後、昭和20年の出来事を題材にした同名小説を平成に白黒で映像化です。今村昌平監督の代表的で文学的な作品。

ピカドン直後の凄惨な状況を所々に挟むことで映像的な緩急がついてますが、淡々と進んでいきます。キャスト陣の演技力も相まってゆっくりと原爆症のなんたるかが進行します。

なんと言ってもラストが悲しい感じで、良いです。反戦映画に感動はいらないです。
Jimmy

Jimmyの感想・評価

4.0
2015年8月15日(終戦70年の日)に鑑賞。

この映画、本当であれば8月6日(広島の日)に観るのが、対峙する姿勢としては正しいのかも知れない。

あまりにも、広島に原爆が投下された爆心地や被災者を、真正面から捉えた映画だったので驚いた。

原爆投下直後の爆心地では、身体が溶けている人々、黒焦げになって塊となった人達、そして黒い雨に打たれて被爆者となった人など…本当に「これが人間の所業なのか!?」と思ってしまうほど心うたれて、「二度と戦争はしてはならない」と思う。

田中好子、北村和夫、市原悦子などが今村昌平監督の要求に見事応えている。

戦争の悲惨さから目を背けることなく、真正面から戦争の悲惨さに向き合った反戦映画の傑作。
lag

lagの感想・評価

3.8
強烈な閃光と熱線に爆風。意識が戻り目を開けると瓦礫の山と火の海。おどろおどろしく湧き上がる雲。腕から垂れ下がった皮膚。酷く縮れた頭髪。変わり果てた全身火傷とぼろぼろの服で歩く。うつ伏せに倒れてくる。骨と皮の手足が空に向けて伸びる。踏み場もないほど黒焦げの死体。動かない人間が無数に浮かんで流れてくる川。

行く宛もないから一先ず妻と姪を連れて職場の工場へ。よう生きててくれたと労われる。知らずに街を歩き回った時の残留放射能。染み込んで身体を蝕む毒。エンジンの音が聞こえる度に戦車の下に爆弾を仕掛けようとする男。朝鮮戦争拡大と水爆開発のニュース。日記を清書して振り返る。成長する鯉。蝉や蛙の声。すすきが舞う。死亡届を受け取る人が居ない。亡者を導く力などない。
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