あんり

テイク・ディス・ワルツのあんりのレビュー・感想・評価

テイク・ディス・ワルツ(2011年製作の映画)
4.0
私にとって彼女は
素敵なワンピースを着た反面教師。
そしてたぶんあれは私。

新しいものに人は刺激を覚えるけど、どんなものも古いものになっていく。その時、また別の新しいものを探すか、古いものに落ち着くか。恋愛だけではなくあらゆることにその選択は存在する。

新しいものを追い続ける人もいる。それでも古いものをずっと愛している人もいる。それは同じものから何度も新しい一面を見出しているから。それは熟成と似ている。全く新しい別のものではなく、新しい「深み」を知ること。それが何かを続ける、誰かを愛し続けるための唯一の方法かもしれない。
ワインをゆっくり丁寧に愛することで美しい深みのある味を育てるように。だからいつだってワインが人を飽きさせることはない。

さらに忘れてはならないのは、変化のない毎日が送れることは幸せであること。人は何でも慣れてしまうからその有り難みを思い返さなくてはならない。
帰ってきた時に家に灯がついていること。お気に入りの服を何年も着られること。彼が香ばしい香りをたててキチンを焼いてくれること。朝日と夕日が毎日見られること。好きな人に会えること。
なんだって失くさないとその幸せがわからない。それではいけない。それでは古いことしか知らず、幸せを捨て続けてしまう。

彼女が自分の心を満たせなかったのはこれが理由の一つであろう。
だから彼女は私の反面教師。そしてたぶんあれは私。
あんり

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