ふゆ

エンター・ザ・ボイドのふゆのレビュー・感想・評価

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)
4.5
性(生)と死と、輪廻。

映像がすごくて、オープニングのスタッフロールからめちゃくちゃかっこいいのだけど、目が痛い。とにかくギラッギラ!
劇中の東京の治安が悪すぎる…ネオンギラッギラ!
ラブホのシーンはあらたなボカシ方法にちょっと笑っちゃう。おまたギラッギラ!

あと、これを観た時点で出産まもなくまだ授乳もしてる私としてはなんかビミョーーーな気分に…
飛行機に乗ってたお母さん、授乳ケープ使ってー!
性行為=新しい命へつながるのは分かりきってはいるのだけどそこをあけすけに堂々と示してくるとなんだかなぁという微妙な気持ち。いや、この作品の性描写がなんかギラッギラしすぎてるんだ。この監督は元々露悪的な作風だから仕方ないか…
でもラストは嫌いじゃない。それまでのギラギラとの対比よ…
監督によると妹の子として転生ではなく自分の母から生まれたときの回想からの死=無らしいけどとても安らか〜…

兄妹の絆はわかるのだけど…
兄妹以上の肉体的な関係を匂わせて直後に幼い頃の姿を出してくるのはちょっと気持ち悪くて嫌だった。
欧米人は東洋人に比べて年齢が高くみえることが多いけれど、この兄妹は幼くみえてそれもたぶん意図的にそう見せてる気がしてなんだかいたたまれない気持ち。

面白いとは思うし楽しめたけど、とにかく人を選ぶ。ギャスパー・ノエ作品だし万人受けするはずはないけど…
鑑賞中いろんな感情でぐしゃぐしゃになり、結構疲れた…

終盤は急に友人と妹ちゃんがああなったり、ホテルや街並みが見たことある模型みたいになったり、子供の頃の幸せな時間やかなしい出来事や激気まずい体験を思い出したり、受精してみたり、うまれたときのこと(たぶん想像か、潜在的な記憶かと)を思い出してみたり、きっと臨終が近づいて願望とか思い出とかがごちゃまぜになってるのかなぁ…と。夢みたいなもの。
それまでのこともどこまでが事実でどこからが夢なのか…
オスカーがななめ読みした死者の書がそのまま描かれてるのだろうけど、劇中それは事実ではなくてあくまで思想や願望として描いているのかなと思った。現実的。
結局は死=無。
本人にとっては幸せかもしれないけど、ちょっぴり残酷さも感じてしまう。ノエ監督だから仕方ないか。

堕胎シーンあるのでちょっと注意。苦手な人もいると思う…
ふゆ

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