記録

なんとまあ美しいテクニカラーのアラビアンナイト系チャンバラ映画。
宰相の命令で王子を殺しに入った盗賊が、殺すに殺せず王子を攫って子どもとして育て、という話。
けっこうコミカルな印象。出自を最初から知っている主人公と育ての両親の朗らかな関係。特に父キャラが良い。もちろん主人公も美男でモテモテで弱者に優しく調子が良くて、うーん女の趣味以外はパーフェクト。主人公と彼に惚れる少女盗賊ヒロインのケンカがコミカルだが、ヒロインの性格は受け付けない。そのぶん☆0.5マイナス。悪女のお姫様はもう少し迫力が欲しいところ。
混雑した街並みは空も見えず迷路のよう。それも夜、炎と思しき灯りに照らされ、人混みの中を逃走。街の高低差を使った市街戦。夜の闇や炎に照らされたオレンジの灯りがテクニカラーに映えて雰囲気を醸成。撮影はアーヴィング・グラスバーグ。監督は名カメラマンから転向したルドルフ・マテ。
主役はトニー・カーチスでたぶん初主演。若くてピカピカで特有のクドい雰囲気がまだ薄いもののそれがエキゾチックに見え、お調子者でコミカルで、色気があって爽やかさもありと魅力いっぱい。演技もやる気満々で溌剌としている。テクニカラーにテカテカと輝く水も滴る色男。
それに比べるとヒロイン役のパイパー・ローリーはテクニカラー映えも特になく。なるほど、こんな役をやっていたら演技派女優に脱皮したくなるわけだ。アクロバットしたり縄抜けはスタントなのかな？この時代には珍しい小娘タイプの女優ではある。同時代だとテリー・ムーアかアン・フランシスくらい？
盗賊の父のエヴェレット・スローンが個性的で魅力がある。ギョロギョロした目つきの悪人顔で、コミカルさも義理人情も表現する。