於キヨ

ライアーの於キヨのレビュー・感想・評価

ライアー(1997年製作の映画)
3.8
ライアーLiarの原題はDeceiver。こちらの意味は欺く人(詐欺師)。嘘つきより詐欺師の方が、ティム・ロスっぽくてしっくりくる。劇中ではウェイランド青年。うん。ただの嘘つきではない。だから欺く人の方がいい。

毒を以て毒を制すみたいな結末。どいつもこいつも欺いて、欺かれて。ウェイランドは善人じゃないし、どうしようもない部類の人間に入ると思うけど、友人を殺した男と立ち向かった。世間一般的に彼の行動は悪だと非難されるかもしれないけど、ウェイランドなりに自分の信念に基づいて行動したのは単なる悪と言い切れるのか否か。これが現実に起きた問題だったら、彼のような人間の心や思考なんて推測するより他はないから、味方できないけど、ウェイランドには同情できる。

人を喰ったような話し方で嘘を吐いて、他人を苛立たせる天才の彼でも、友人エリザベスに抱いていた感情だけは本当だと思いたい。エリザベスと会話している時の彼は可愛い。

もう一人の男の所業が明るみに出るまでの経緯がサスペンスの真髄という感じでよい。ハラハラドキドキ。正義だと思ったのが正義ではないし、悪だと思ったのが悪でない。どれが妄言で、どれが真実なのか段々解らなくなってくるのが楽しい。

ウェイランドの結末も、あれ?なんで?となったけど、よくよく見返してみると、あの職業の人、この職業の人、いずれもどこかで彼と繋がりのあった人だったわけで、よく出来てる。派手なアクションとかはない。それにしてもティム氏、発作の演技上手すぎ。
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